第13章 平行世界
「で、でも!自分もきっと此方の私の世話を焼くでしょ!?」
「嫌なのかよ?」
「嫌…じゃないけど」
中也の人となりは把握している心算だ。
客人を持て成す程度だろうと想像がつく。
それに、違う世界の私だとしても私だ。優しくしてくれるなら嬉しい気持ちさえある。
「私は大丈夫なのに中也は駄目だなんて…!」
「俺は独占欲が強ェからなァ」
「そういう事ですか!?」
クツクツ笑うと中也はアリスの頭を撫でてやった。
「まあ、帰り着いたあとのことは帰ってから覚悟しな。取り敢えず軽くメシ作るから風呂入ってこい」
「うぅ……有難う」
アリスはフラフラとお風呂場へと消えていった。
それから食事をし、少し大きいが中也の寝間着を借りてアリスはゲストルームのベッドで就寝した。
スヤスヤと眠るアリスを確認してリビングに戻る中也。
「不法侵入で訴えンぞ」
リビング入口を睨みつけながら云うと、ガチャリと扉が開いた。
「マフィアが警察を頼れるわけないでしょ」
莫迦にするようにそう云うと、不法侵入者こと太宰治はダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。
「俺に押し付けといて何しに来たんだよ」
「……戻ってきてないかなと思って」
「来てねえよ。残念なことにな」
中也は太宰の向かいに座り、ワインを呑み始めた。
「判ったことは」
「『ワンダーランド』は使えるみたいだな。効果も同じようだ」
「そう」
「後は手前も云ってた通り、俺と結婚してるらしい」
「……それが一番信じたくないね」
ハア、と溜め息をつく太宰。
「手前が惚れてる女が俺と結婚してるとか傑作だぜ」
「それくらい気に入っているということだろう、君も私も」
「……違いねえ」
此方に来たアリスが云っていた太宰を警戒する向こうの自分の気持ちも理解できる中也がいた。
「如何すンだよ」
いつの間にか、自分の分のワイングラスを持ってきて酒盛りを始めた太宰に中也が問う。
「『ワンダーランド』が使えるなら話しは早い。逃走した男の行方を追ってもらう」
「人探しならアリスの得意分野だろうしな」
つまみで用意していたナッツを口に放りながら納得する中也。