第13章 平行世界
アリスは倉庫を出て、海沿いの道を走っていた。
「もうっ!走るの早い!」
怒りながらも、眼の前の男を取り逃がさないように一生懸命走る。
一本、道を出てしまえば人通りが多い場所に出てしまう。
逃走経路に気を付けながら、アリスは追跡をする。
「しつこいな、君も!」
「貴方が子供たちの家出斡旋をしている人物なんでしょ?取り逃がすわけにはいかない」
「捕まえて如何する!」
「勿論、子供達について話してもらうよ?依頼人達が口を揃えて子供が可笑しいって云ってきてる。その絡繰を吐いてもらうんだから」
「素直に教えてあげると思うわけ?」
息が整ってきた男は、大きく息を吐くとアリスを挑発するような言葉を投げ掛けた。
「黙り決め込んでもいいけど、此方側にはそういう態度の人から知りたいことを吐かせるの得意な人が居るけど大丈夫?」
「え。」
「もうそろそろ来てくれる筈だし、その時が貴方の年貢の納め時だよ?」
アリスがジワジワと距離を詰める。
男は口をキュッと結ぶとアリスに向かって走り出した。
「え!?」
突然の行動に困惑するアリス。
「そんなに知りたいなら、身を持って教えてやるよ!」
男がアリスの肩にトン、と触れた。
「っ!?」
同時に、カッ!と眩い光が当たりを覆う。
その光が収まった時には、アリスしか立っていなかった。
「え?何?何事??」
焼き菓子を持ったまま、辺りを見渡すアリス。
自分は今まで中也の執務室で御茶を嗜んでいた筈なのに。
その疑問を抱きつつ、手に持っていた焼き菓子をパクリと食べてみる。
「夢じゃないみたい」
アリスは焼き菓子をモグモグしながら、取り敢えず人の気配のする方へ歩き出した。
その時だった。
「アリスちゃん!其方は見付かった!?」
「!」
自身の名を呼ぶ声の方を振り返るアリス。
現れたのは、2人。
「アリスちゃん?」
返事のないアリスの傍に寄ろうとした敦の手を取って、静止する太宰。
「待つんだ、敦君」
「!」
その言葉にピタリと止まる敦。
「虎のお兄ちゃん?それに治兄」
その言葉で、敦も困惑する。
「…君は私の識るアリスではないね」
太宰は息を吐いて、云った。