第12章 居場所
中原中也は、首を傾げていた。
普段、そんなにテレビを視聴したりしない自分の妻が、報道番組やワイドショーをジッと観ているからだ。
ここ最近のニュースといえば連続誘拐事件の報道ばかり。
ワイドショーもそのネタばかり扱っている。
ーーーそして、その報道が世間を賑わす頃からアリスの口数が少なくなり、様子も可笑しいのだ。
「なあアリス」
「……何?」
「手前、矢ッ張りなんか可笑しいだろ。体調でも悪いのか?」
ソファに座るアリスの前に、淹れたての紅茶を置き、自身も隣に座ると心配そうに問う。
その質問に対してアリスは首を横に振った。
「大丈夫。どこも悪くないよ」
「なら、質問を変える。何があった?」
「……。」
無言は肯定の意だ。
何かは分からないが何かがあったことは判った。
「中也」
「何だ?」
「○✕って組織必要?」
「は?」
突然の仕事の話に中也は一瞬、ポカンとなる。
「彼処は荷物の受け流しが上手い小規模な組織だが…切り捨てるとなると流石に首領の許可がいるぞ」
「そっかー…じゃあ今から首領の所に行ってきてもいい?」
「…それが手前の様子が可笑しい原因と関係があるのか?」
「様子の可笑しさは自分じゃ分からないけど、片が付いたらスッキリするかも」
そう云うアリスの表情は暗い。
何が起こっているのか、中也は読み取ることは出来なかった。
そうなれば、出来ることは1つに限られる。
直接聞くことだ。
「車を出す。移動中に全部話せ」
そう云うと中也は身支度を始めた。
その様子を見ながらアリスは少し考える。
全容を知ったら怒られるか、嫌われるかーーー。
前者ならばまだいいが、後者ならば如何しようかと考え込む。
然し、その悩みは直ぐに解決をした。
「異能力開発実験、か」
運転しながら中也は話を聞いていた。
「私がされていた実験を第一弾とすれば第二弾が始まってる」
「詰まり、今世間で賑わせてる誘拐は全員異能力を持った餓鬼ってことか」
「……そうなるね」
成程な、と中也は云った。
それならば、アリスの様子が可笑しいことにも納得がいく。
理由が分かり、中也は安堵の息を漏らした。
自分が想像していたような「何か悪い事」ではなかったからだ。