第10章 猫の日
中也達は執務室に戻ってきていた。
「あの様子じゃ指輪は直ぐに見付かンだろ」
「本当?」
心配そうにアリスが聞いてきたので、全身を撫でてやる中也。
「彼奴等の目的は判らねえが姐さんに任せる、それでいいか?」
「うん。私は指輪さえ戻ってきてくれれば如何でもいいから」
「そうか」
そんな会話をしているときだった。
「失礼します」
叩敲の後、昨日一緒に行動していた中也の部下が入室してくる。その後ろに1名、中也とはあまり関わりのない男が立っていた。
「誰だ?其奴」
「中也さんの部屋の前に立っていたものですから」
「…そうか。で、如何だった?」
中也は取り敢えず、部下の話を聞くことにした。
「矢張り、ここ最近、人身売買組織と手を組んで荒稼ぎしているとの噂がありました」
「人身売買か。そりゃ結構な稼ぎになンだろうよ」
「はい。そのせいで金に物をいわせて好き勝手し始めているとの評判が流れています」
「そんな噂が流れてるたァ世話ねえな」
中也は、アリスの方をちらりと見る。
「……▲▲のこと?」
「嗚呼、矢張り手前の耳にも入ってきている情報か?」
「勿論。私の調べではお金の流れも確認できてるから本当だと思う」
「「猫が喋った!?」」
「あ。」
部下とその後ろにいた黒服が同時に驚きの声を上げる。その声で、話すなと云われていたことを思い出したアリスは間の抜けた声を発した。
中也がそれを止めなかったのだ。
「おい、お前」
「は、はい」
「あ…」
中也に声を掛けられて、返事をする黒服の男。
その声を聞いて、アリスは今度は何かに気付いたような声を上げる。
その様子を見て、中也は小さく息を吐くと、続けた。
「折角、自分の意志で来たんだ。凡て話すか否か選んでいいぜ」
その言葉に少し青褪める黒服の男。
そして、意を決したように手をグッと握ると、物凄い勢いで土下座した。
「申し訳ありませんでした!」
その行動に、ポカンとした中也の部下を退室するように指示し、部下が出ていったのを見届けて続きを促した。
「中原幹部が訓練に参加していた者にお会いしていると聞いて…」
「謝るっつー事は、手前がこの件に関与してるって認識でいいんだな?」
「……はい」
男は頭を上げずに答えた。