第3章 Lesson2 新たなる学び舎
崩れた壁に欠けたアーチ、ところどころに残る柱の基部、切り出された石材の余り。確かにハーマイオニーの言う通り、且つてはそこに何かが存在した“痕跡”が見て取れる。
巨大で、整然として、意味を持った構造。だが今は、その断片だけが残されている。
「……ここか」
「ものの見事に廃墟だな」
「2人ともどこを見ているの!?ほら、あのアーチを見て!他は装飾だけが狙って壊されてるのに、あれだけは破壊の跡が無い!つまりあそこが入り口なんだわ!一見すると――…」
これ以上は長くなると判断したレイは、早速アーチをくぐろうとした。正直言って生粋の魔法族育ちに、このマグル式公共交通機関での移動は思っていた以上に体力を奪われる。
だがその瞬間、ドラコにパッと手首を捉まれた。
「待て」
「何か問題でも?」
「観光客がいる」
いちいち面倒くさいと思ったが、確かにマグル除けされていない場所に初めて足を踏み入れるのだ。多少の気遣いは必要だろう。
演説を終えたハーマイオニーが隣に並び、観光客が通り過ぎる。今だ!と判断するとともにレイはサッと足を踏み出した。それと同時に、ドラコが門をくぐる。それに少し遅れてハーマイオニーが続いた。
――その瞬間、世界が変わるのが分かった。音が転がり、光が満ち、空気が変わる。まるで巨大な万華鏡の中に落っこちてしまった様な感覚だ。
目ではなく、頭に直接膨大な人々の記憶の断片が見えては消えていく。これは誰の視点だろうか……?
膨大な記憶に、頭が破裂しそうになる。そう思っていたら視界がうねり、崩れていたはずの壁がぴったりと繋がり、高い天井が空を覆った。
そこはもう、作られた廃墟などではない。大いなる信仰の証であり、巨大なカトリック教会の化け物である聖アンドリュース大聖堂の胎の中だ。ロマネスク様式の大きなアーチで出来た大きく長い廊下が続き、足を踏み入れた者を圧倒させる。
「素晴らしいわ!これが位相の転換なのね!!」
「位相の転換?」
「つまり簡単に言うと、ここは現実とは少し空間が“ズレている”ってこと」
「ズレてる……なるほどな」