第3章 Lesson2 選ばれた意図
――音が転がり、光が満ち、空気が変わる。まるで巨大な万華鏡の中に落っこちてしまった様な感覚だ。
目ではなく、頭に直接膨大な人々の記憶の断片が見えては消えていく。これは誰の視点だろうか……?
そう思っていたら視界がうねり、崩れていたはずの壁がぴったりと繋がり、高い天井が空を覆った。
そこはもう、作られた廃墟などではない。大いなる信仰の証であり、巨大なカトリック教会の化け物である聖アンドリュース大聖堂の胎の中だ。
ロマネスク様式の大きなアーチで出来た大きく長い廊下が続き、足を踏み入れた者を圧倒させる。
「素晴らしいわ!これが位相の転換なのね!!」
「位相の転換?」
「つまり簡単に言うと、ここは現実とは少し空間が“ズレている”ってこと」
「ズレてる……なるほどな」
ホグワーツほどではないが、流石は千年近く前に建てられた大聖堂だ。建物に掛けられた魔法や結界はそんじゃそこらの教会とは一線を画しているだろう。
それにしても500年前に宗教革命によって壊されても尚、その“存在を示す”だけの力があるとは……いやはや、ここがホグワーツの仮校舎に選ばれたのも当然かもしれない。
「――ようこそ、ホグワーツの皆さん。聖・アンドルーズ大聖堂へ」
ふと、耳にふわりと声がささやきかけた。咄嗟に振り替えると、そこに居たのは神父と思わしき人物だった。純白のローブを目深にかぶり、さらにローブと同じ布で作られた細くて長い目隠しをしている。
それよりも何より驚いたのは、その存在感の有無だ。まるで最初からいたかのように振舞っているが、声を掛けられるまでその存在に一切気づけなかった。
驚くレイ達を前に、神父はさざ波の様な涼やかな声で語りかけてきた。
「さあ、皆さん。どうぞ廊下を真っすぐ進んで下さい。先生方がお待ちですよ」
どこか懐かしいような、優しい声。しかし驚くべき点はそこではない。布で見えていないはずなのに。確かに視線が合う。試しにサッとドラコの影に隠れて見たら、不思議そうにわずかに小首をかしげてみせた。
この神父、唯者ではない……。
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私は聖・アンドリュー11世。形式上はこの教会の神父ですが、肩ひじ張らず、ただの管理人とでも思って下さい」