第3章 Lesson2 選ばれた意図
そう言うと、聖アンドリュー11世は穏やかに微笑んだ。その声音には警戒心を抱かせるものが何一つ無かった。むしろ、どこか懐かしい。
まるでずっと昔から知っている人に迎えられた時のような、そんな安心感があった。
レイが記憶を手探りしていると、1つの答えにたどり着いた。あぁ……そうか、どこか懐かしい感じがすると思ったら、雰囲気が少しダンブルドアに似ているんだ。
だが見たところ歳はせいぜい30代だ。100歳を超えるダンブルドアと同等なわけがない。となると絶対に何か裏があるはずだ……。
レイはたちまち聖アンドリュー11聖という人物に興味が湧いた。
「聖アンドリュー様、ここの神父になられたのはいつからですか?」
「アンドリューで結構ですよ。ん~、いつからか。そうですねぇ……」
アンドリューは口元手を当て、少し考える素振りをした。その仕草も、どこか優雅に髭を撫でているダンブルドアを思い出させる。
レイが訝しんでいると、なんと驚くべき答えが返って来た。
「900年ほど前からでしょうか」
「は?」
「正確には覚えていませんが」
「はぁ??」
「長く生きていると年数を数えなくなるんですよ」
「はあぁ???」
ふざけているのかとも思ったが、本人の口調は至って真面目だ。レイは咄嗟にハーマイオニーとドラコに目をやると、2人とも同じように困惑した表情を浮かべている。
さらに質問しようとレイが口を開いたと同時に、アーチをくぐって来たホグワーツ生とみられる団体が現れた。先ほどのレイと同様、何が起こったのか目を白黒させている。
アンドリューは軽くレイに向かって会釈をすると、そのまま生徒たちを出迎えに行ってしまった。
「……逃げられたな」
「流石に900歳はないだろう?」
「分からないわよ、なんて言ったってここは――」
――数多くの仮校舎候補の中から、何らかの『意図』があって『選ばれた』んですもの。
ハーマイオニーのその言葉を密かに聞いていたアンドリューは、誰にも悟られぬよう小さく微笑んだ。
何らかの『意図』があって『選ばれた』
――それは違う。
彼方達は此処へ来ることを、自ら『選んだ』のですよ。
それがどういう『意図』なのか、どうかこの地で学んでくれますように……。