第3章 Lesson2 選ばれた意図
長かった列車の旅を終えると、次はバスが待っていた。レイとドラコは大人しくハーマイオニーに従いバスに乗ると、今度は徒歩で大聖堂を目指した。
道中、重そうにトランクを引きずるホグワーツ生を数人見かけたが、顔見知りは1人もいなかった。
「これで着かなかったらどうする?」
「着く」
「根拠は?」
「来た道を戻ればいいわ」
「単純明快だな」
潮のにおいを嗅ぎながら、レイ達は聖・アンドルーズ大聖堂を目指してひたすらに歩いた。
懐かしいスコットランドの空は今日も鉛色をしており、それがやけに落ち着く。
しばらく歩くと遠くに海も見えた。中々どうして、ホグワーツとは毛色こそ違うが、自然の豊かさを感じる。遠いさざ波を耳に、レイはそっと目を閉じた。
「レイ、どうした?」
「いや、何でもない」
それからまた歩みを進めると、遠くの方に石の壁が現れた。最初は低い、ただの囲いのように見えた。だが歩を進めるごとに、その高さと厚みが増していく。そしてようやく “遺跡”が見えてきた。
崩れた壁に欠けたアーチ、ところどころに残る柱の基部。確かにハーマイオニーの言う通り、且つてはそこに“何かが存在した”痕跡が見て取れる。
巨大で、整然として、意味を持った構造。だが今は、その断片だけが残されている。
「……ここか」
「ものの見事に廃墟だな」
「2人ともどこを見ているの!?ほら、あれを見て。装飾だけが狙って壊されてる!あれは――」
これ以上は長くなると判断したレイは、観光客などものともせずにアーチをくぐろうとした。瞬間、ドラコにパッと手首を捉まれる。
「待て」
「何か問題でも?」
「観光客がいる」
いちいち面倒くさいと思ったが、確かにマグル除けされていない場所に初めて足を踏み入れるのだ。多少の気遣いは必要だろう。
演説を終えたハーマイオニーが隣に並び、観光客が通り過ぎる。今だ!と判断するとともにレイはサッと足を踏み出した。それと同時に、ドラコが門をくぐる。それに少し遅れてハーマイオニーが続いた。その瞬間、世界が変わるのが分かった。