第3章 Lesson2 選ばれた意図
それから2人はハーマイオニーに切符の買い方を教えてもらうと、1枚の小さな切符を手に自動改札機に挑んだ。
開閉する小さな扉にオロオロするレイとドラコは、人の波に押されながらどうにか改札機を通り抜けることに成功した。
レイはもちろん、ドラコでさえこんな情けない姿を晒すくらいだったら、大人しくハーマイオニーの指示に従おうと2人は気持ちを切り替えた。
列車に乗り込むと、3人は向かい合わせの席に座った。レイは当然、窓際の席だ。窓を少し開けると、夏らしい緑の風が首筋をくすぐった。
「それで?これから行く仮校舎はどういう所なんだ?」
発車の合図と共にゆっくりと景色が動き出すと、早速レイは当たり前のようにハーマイオニーに尋ねた。すると彼女は何か言いたそうな視線と共に小さくため息を吐いた。
「聖・アンドルーズ大聖堂って言って、スコットランドを代表する大きなカトリック教会だったのよ」
「だった?」
「16世紀の宗教改革によって、破壊されたの」
ハーマイオニーの声は落ち着いていて、まるで講堂かどこかで演説しているかのように滑らかな口調だった。これまでの経験から察するに、これは絶対長くなる――。
レイは自分の選択をミスしたと認め、すぐさま車窓の縁に頭を持たせかけた。
「当時、この大聖堂はカトリックの重要拠点だったの。スコットランドにおける宗教的中心地。巡礼の対象であり、権威の象徴でもあった場所よ」
「だから目の敵にされたと?」
「その通りよ。プロテスタント運動は、単なる宗教の違いじゃない。思想の転換よ。“何を信じるべきか”という問題に対して、根本から答えを変えようとしたのよ」
「……へえ、それで?」
もう慣れっこのレイは、ハーマイオニーの演説を右から左に流していったが、意外にもドラコが先を促した。そしてそれに答えるように、ハーマイオニーの演説に熱がこもる。
「カトリックは聖人や聖遺物、教会そのものに“意味”を持たせる。でもプロテスタントはそれを否定する。直接的な信仰、個人の内面を重視するから」
「だから壊したのか?“意味”を無効化するために?」
「正しくその通りよ!象徴を破壊して、それまでの宗教の持つ“意味”そのものを破壊したの!これが当時何を示したと思う!?」