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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


恵くんは私の前に置かれたりんごジュースを、少しだけこちらへ押し戻した。
泣いたあとで喉が渇くだろ、とでも言うみたいに。
その仕草が恵くんすぎて、また少し泣きそうになった。


虎杖くんが突然、ぴっと手を挙げた。



「先生、質問!」

「はい、悠仁くん!」

「その呪霊……うぶめ?って何? 有名なの?」



その瞬間、野薔薇ちゃんがぎょっとした顔をした。



「あんた、姑獲鳥も知らないの?」

「え、そんな常識?」

「怪談とか妖怪の話で聞くでしょ。赤ん坊を抱いた女の幽霊とか、子どもをさらう女の化け物とか。虎杖、オカ研だったんじゃないの?」

「いや、俺……ユーレイ部員だったし」



虎杖くんが気まずそうに言うと、恵くんが口を挟む。



「難産で死んだ女とか、子どもを産めなかった女の未練から生まれるって言われてる。地方によって話は違うけどな」

「へー……そういう系か」



五条先生はドリンクの氷を揺らしながら、空いている椅子に腰を下ろした。



「姑獲鳥は『母親になりたい』っていう執着から生まれた登録済みの特級仮想怨霊だよ。だから人間の赤ん坊を攫って、自分の巣で育てるんだ。……まあ、普通の人間の子は、呪いにあてられて数日も生きてられないんだけどね」

「え、でもは……」



虎杖くんが、ごくりと唾を飲み込んだ。

その呪いの巣で、私が五年間も生かされていたことがどれだけ異常なことか、虎杖くんはすぐにわかったのだろう。


私は自分の両手を見下ろした。

あれに乳を飲まされて育ったせいで、私の体には姑獲鳥由来の呪いが混ざっている。
私が、自分を普通の人間だと思えない理由だ。



「が声を出せないのも……まだ物心つく前に、縛りを結ばされたんだと思う。姑獲鳥にとって都合のいい形でね」



先生がそう言うと、虎杖くんたちは複雑そうな顔で頷いていた。

五条先生は、私の声に何らかの縛りがかけられていることには気づいている。
けれど、その本当の条件までは知らない。
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