第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
「俺と比べていいかわかんねーけど。俺、のこと気持ち悪いとか思わないよ。むしろ……、すげー頑張って生きてきたんだな」
「呪いに育てられたとか、声が出せないとか、そんなの関係ねぇよ。俺たちにとっちゃ、はだろ?」
二人の温かい言葉に、うまく頷けなかった。
目の奥がじわりと熱くなる。
すると、恵くんが私の手からペンを取って、さっき私が書いた文字の下に短く書き足す。
『軽蔑なんかしてない』
『一緒にいたいからいる』
書き終わると、恵くんは目を逸らしてしまった。
きっと、深い意味なんてない。
恵くんは昔からこういう人だから。
困っている時は、何も言わずに手を伸ばしてくれて。
私が欲しい言葉を、いつも少しだけ不器用な形でくれる。
だから困る。
家族みたいな人だと、何度も自分に言い聞かせてきたのに。
私は、その文字から目を離せなかった。
だんだんと、その文字がノートの白いページの上で滲んでいく。
あ、と思った時には、もう遅くて。
ぽた、と涙が落ちた。
「……?」
恵くんが、少し焦ったように私の名前を呼んだ。
私は首をぶんぶんと横に振る。
違う。
悲しいんじゃない。
嬉しいの。
そう伝えたいのに、涙ばかりがこぼれて、ペンを持つ手がうまく動かなかった。
「あー。恵が泣かせた」
五条先生が、わざとらしく声を上げる。
「俺のせいですか!?」
「だって今、恵が何か書いた瞬間に泣いたじゃん」
「先生が余計な話したからでしょうが」
「えー、僕のせい?」
私は制服の袖でぐいっと涙を拭って、濡れてしまったページの端に文字を書いた。
『みんな、ありがとう』
『私も、みんなと一緒にいたい』
書き終えると、虎杖くんがぱっと笑った。
「もちろん! 一緒にいようぜ」
野薔薇ちゃんも、当然だと言わんばかりに頷く。
「最初からそう言ってんでしょ」