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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


ある日。
暗い巣の中に、黒いサングラスをした白い髪の人が来た。

その人は、あれを傷つけようとしていた。
だから噛んだ。
差し伸べられた手に、思いきり歯を立てて。


けれど、歯は届かなかった。
その人の手と私の歯の間に、見えない何かが挟まっているみたいだった。



「へー……姑獲鳥(うぶめ)に育てられた子か」



そんなふうに笑って、私を抱き上げた。


その腕があまりにもあたたかくて。
怖くなった。
あれに抱かれる時は、いつも冷たかったから。


私はその腕の中で、必死にあれを探した。
けれど、あれはどこかへ消えていた。
私には、その人があれを奪ったように見えた。


(お母さんを返して)


あの時の私は、そう言いたかったのかもしれない。
でも、言葉を知らなかった。
そして何より、声を差し出してしまった私には、もう叫ぶこともできなかった。

その代わりに、私はただその人の服をぎゅっと掴むしかなかった。














「……ってわけで」



五条先生の声で、意識が食堂に戻ってくる。



「は僕が保護して、しばらく様子を見て。それから恵たちと暮らし始めたってわけ」



先生は何でもないことみたいに言ったが、虎杖くんも、野薔薇ちゃんも何も言わなかった。

そうだよね。
こんな話を聞いたら、困るに決まっている。
どう返せばいいのか、わからなくなるに決まっている。


呪いに育てられた子。
人の言葉を知らなかった子。
人間じゃないものを、母親だと思ってしがみついていた子。

そんなの、気持ち悪いと思われても仕方ない。


二人と目を合わせられなくて、私は下を向いた。
その隣で、恵くんが五条先生を睨む気配がした。



「なんで今、そういう話するんですか」

「隠したって、いつかはみんなの耳に入ることだよ」

「だからって」

「それに……」



五条先生は、私の頭にぽんと手を置いた。
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