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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


「……言うね。恵のくせに」



五条先生も、自分の皿に残っていただし巻きをひとつつまみ上げた。
そして、俺が置いただし巻きの真横に、何食わぬ顔で置いた。


の空だった皿に、二つの黄色い塊が並ぶ。

の好きなものを置いて。
こっちを見てほしくて。
引き寄せようとして。

それはまるで、俺たちがに押し付けようとしている重い感情そのものに見えた。


俺たちが黙って睨み合っていると、が湯呑みを持って戻ってきた。



「お待たせしました……あれ?」



湯呑みを置こうとしたの手が止まる。



「だし巻き……増えてる……?」



すぐには何かを感じ取ったみたいに、俺と五条先生を交互に見た。



「あの……二人とも、どうしたんですか?」

「なんでもない」「なんでもないよー」



俺と五条先生の声が、ほとんど同時に重なる。


はきょとんとした顔のまま、皿の上のだし巻きを見つめていた。

増えただし巻きの理由も。
そこに混ざった感情も。
何も知らないまま。



「僕と恵からだよ」

「えっ」

「ね、恵」

「……」



五条先生が、わざとらしく俺に話を振る。



「食えよ。好きだろ」

「……あ、ありがとう」



は少し困ったように笑って、両手を合わせた。
二つ並んだだし巻きを、美味しそうに頬張る。

そんなふうに、何も知らずに受け取ってしまうから。
俺たちはきっと、余計にどうしようもなくなる。



五条先生がに落とした呪い。
俺がに告白した恋。


名前だけなら、まるで違うものに見える。
でも、根っこにあるものは、きっと同じだ。


好きだとか。
守りたいとか。
そんな綺麗な言葉だけじゃ、片づけられないもの。

欲しくて。
手放したくなくて。
誰かに取られるくらいなら、傷つけてでも引き寄せたくなるもの。


その黒い欲は、とっくに俺たちの中で育っていたんだろう。



だって、俺たちはもう――。
















彼女を欲しがってしまっているんだから。
















𓂃 クロユリは君を欲しがる 𓂃

── fin.
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