第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
「恵、知ってる? は、僕のことが好きなんだよ」
「……」
そんなこと、いちいち教えられなくてもわかってる。
昨日本人の口からも聞いてるんだ、こっちは。
あー、ほんとムカつくよ。
あんたのそういうデリカシーのないところが。
「それに僕、聞いちゃったんだよね。昨日の夜」
「……何をですか」
「の、“好き”って言葉」
五条先生はそう言って、自分の指先を見つめた。
そして、思い出すようにふっと口元を緩める。
「あんな顔、恵は一生見られないだろうねぇ」
「……っ」
それって、どういう意味だ。
嫌な想像がまた頭をよぎる。
それでも、まだ決まったわけじゃない。
は俺の手を取った。
ちゃんと見ると、そう言ってくれたんだ。
「……人の気持ちは変わるものです。それは、先生がよく知ってるんじゃないんですか?」
五条先生の眉が、わずかに上がった。
「せいぜい頑張れば。でも僕、に呪いかけちゃったから」
「……は?」
呪い?
何してんだ、この人。
「……呪いってなんですか」
「さあ?」
「五条先生」
「と僕の秘密〜」
くそっ。
この人はいつもそうやって、肝心なところは絶対に言わない。
俺は少し離れた場所にいるへ視線を向けた。
は旅館の人から湯呑みを受け取って、ぺこりと頭を下げている。
もう俺は、を見ているだけで満足できない。
の気持ちが、あんたに向いているからって。
俺はそれを理由にして、また同級生に戻ることはできないんだよ。
「その呪い、俺が祓ってやります」
「恵に祓えんのー? 僕の呪いだよ?」
「だからですよ」
俺は、自分の皿に残っていただし巻きを箸でつまむ。
そして、の空いた皿へそっと移しながら、俺は続けた。
「五条先生もその呪いが、自分に返ってこないといいですね」
先生は黙った。
ほんの一瞬。
本当に一瞬だけ。
それから、いつもの顔に戻る。