第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
♢
「私、お茶のおかわり、もらってきますね」
はそう言って、空になった俺たちの湯呑みを両手で持ち、少し離れたところにいる旅館の人の方へ向かった。
が十分に離れたのを確認してから、正面に座る五条先生へ視線を戻した。
五条先生は、黙々と味噌汁を啜っている。
「昨日……」
俺は口を開いた。
「に告白しました」
「へえ」
腹が立つくらい、心のない相槌。
何も気にすることはないのか、椀を口元へ運んでいる。
俺が告白したところで、の気持ちは変わらない。
この人には、そう思うだけの余裕がある。
「考えてくれるって言ってくれました」
「ふーん、よかったね」
五条先生はそう言って、空になった椀を持ち上げた。
「すみませーん。お味噌汁、おかわりもらえます?」
近くにいた旅館の人が、すぐに椀を受け取って離れていく。
その背中を見送ってから、五条先生はようやく俺を見た。
「で?」
「……」
「それ、僕に報告してどうしたいの?」
どうしたいのか。
そんなこと、俺にもはっきりわかっているわけじゃない。
ただ、この人にも知っておいてほしかった。
俺はもう、ただの同級生のふりをして引くつもりはない。
の隣に、あんたを当たり前みたいに立たせておくつもりもない。
「先生はのこと、どうしたいんですか」
「どうって? それ、恵に関係ある?」
あります、と言いかけて喉元で止めた。
関係ある。
そう言い切れるほど、俺はまだに選ばれていない。
それでも、聞かずにはいられなかった。
「暇つぶしなら、他にいくらでもいるでしょう」
「……」
「先生なら、そういう相手には困らないはずです」
自分のことが好きな子を、心地がいいから側に置いているだけ。
そんなの、あんたが適当に扱ってきた相手と何が違うんだ。
五条先生は戻ってきた味噌汁の椀を受け取ると、膳の上に置いた。
さっきまで軽く流していたくせに、その蒼い目だけがまっすぐ俺を見る。