• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


こんなの、前から見てきただろ。
手を取られただけで赤くなって。
困った顔をしながらも、どこか嬉しそうで。


俺は……またそれを見ているしかないのか。


昨日、考えると言ってくれた。
俺のことも、ちゃんと見ると言ってくれた。

でも。
あの人の隣にいるを見ると、自分がどこにも入れない気がして。

の手を包む、五条先生の長い指。
そのまま部屋を出ていこうとする二人の背中。

二人から目を逸らした、その時――。







「……伏黒くん」



突然、が振り返った。
空いている方の手をこちらへそっと差し出す。



「伏黒くんも、一緒に行こ?」



差し出された手。
赤くなった顔。
それでも、俺から目を逸らさない瞳。



『……ちゃんと、伏黒くんを見るよ』



その言葉の通り、は俺を見ていた。

の中には、五条先生がいる。
それはわかってる。
痛いほどわかってる。


だけど――俺も、いるんだって。

その事実だけで、どうしようもなく胸が熱くなっていく。



「……ああ」



緩みそうになる顔を押さえながら、俺はの手を取った。

細い指が、少しだけ震えている。
初めて握手した時のことを思い出した。


五条先生へ視線を向けると、先生は思いっきり顔を歪めていた。

昔、初めて先生と会った時。
俺を見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした時と同じ顔だった。



「……なんですか、その顔」

「いや、別に」



五条先生はすぐにいつもの余裕たっぷりな顔に戻したが、の手を握る指に、わずかに力を入れたのが見えた。
だから、俺も握った手を離さなかった。


昨日までなら、二人の背中を見ているだけだったのに。
今日は違う。


五条先生がの右手を引いて。
俺が左手を取って。


朝食へ向かう廊下に、三人分の足音が重なった。
/ 166ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp