第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
こんなの、前から見てきただろ。
手を取られただけで赤くなって。
困った顔をしながらも、どこか嬉しそうで。
俺は……またそれを見ているしかないのか。
昨日、考えると言ってくれた。
俺のことも、ちゃんと見ると言ってくれた。
でも。
あの人の隣にいるを見ると、自分がどこにも入れない気がして。
の手を包む、五条先生の長い指。
そのまま部屋を出ていこうとする二人の背中。
二人から目を逸らした、その時――。
「……伏黒くん」
突然、が振り返った。
空いている方の手をこちらへそっと差し出す。
「伏黒くんも、一緒に行こ?」
差し出された手。
赤くなった顔。
それでも、俺から目を逸らさない瞳。
『……ちゃんと、伏黒くんを見るよ』
その言葉の通り、は俺を見ていた。
の中には、五条先生がいる。
それはわかってる。
痛いほどわかってる。
だけど――俺も、いるんだって。
その事実だけで、どうしようもなく胸が熱くなっていく。
「……ああ」
緩みそうになる顔を押さえながら、俺はの手を取った。
細い指が、少しだけ震えている。
初めて握手した時のことを思い出した。
五条先生へ視線を向けると、先生は思いっきり顔を歪めていた。
昔、初めて先生と会った時。
俺を見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした時と同じ顔だった。
「……なんですか、その顔」
「いや、別に」
五条先生はすぐにいつもの余裕たっぷりな顔に戻したが、の手を握る指に、わずかに力を入れたのが見えた。
だから、俺も握った手を離さなかった。
昨日までなら、二人の背中を見ているだけだったのに。
今日は違う。
五条先生がの右手を引いて。
俺が左手を取って。
朝食へ向かう廊下に、三人分の足音が重なった。