第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
「「……」」
こんもりとした布団の山が、さっきより小さくなった気がする。
「……ぷっ」
先に吹き出したのは、五条先生だった。
「ちょ、。タイミング完璧すぎでしょ」
「……っ」
俺も、堪えきれずに小さく息を漏らした。
「わ、笑わないでくださいよ……!」
が、がばっと布団を跳ね除けた。
寝癖で少し跳ねた髪。
真っ赤な顔。
むっとしたように俺たちを見ているその顔は、いつもの――俺の好きなだった。
「お腹は……お腹は、私の意思とは別なので……!」
「はいはい。お腹は正直だもんね」
「先生っ」
五条先生は肩を揺らして笑うと、表情をやわらげた。
「、おはよ」
その声は、俺と話している時よりずっと優しかった。
は一瞬だけ目を瞬かせて、それからますます顔を赤くする。
「……おはよう、」
俺も声をかけると、の視線がこっちへ移る。
昨夜のことを思い出したのか。
少しだけ迷うように唇が動いたあと、は浴衣の襟元をぎゅっと握って、こくりと頭を下げた。
「……お、おはようございます……先生、伏黒くん」
その声はまだ頼りなかったけれど。
布団の中に戻ることは、もうしなかった。
「じゃ、行こっか」
五条先生はそう言うと、あまりにも自然にの手を取った。
の肩がほんの少しだけ跳ねたが、戸惑いながらも、その手に引かれるまま立ち上がる。
「せ、先生……っ」
「なに? 朝ごはん、行くんでしょ」
「そ、そうですけど……あの、て、手が……」
そう言いながら、の頬がまた赤くなった。
その顔を見ると、胸の奥がまた黒い嫉妬に蝕まれる。
そうだよな。
何、期待してたんだ。俺は。
は五条先生が好きなんだから。