第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
「わかった。急かす気はねぇよ」
「……ありがとう」
告白されたあの日は、いろんなことが一度に起こりすぎた。
ちゃんと返事ができたのか、自分でもよくわからなかったから。
こうして改めて伝えられて、ちょっと肩の力が抜けた。
「じゃあ、次は伏黒くんの番」
「……俺も、ひとつ聞いていいか」
「うん、なんでも聞いて」
そう答えると、伏黒くんはなぜかすぐには口を開かなかった。
一度視線を落としてから、少し言いづらそうに私を見る。
「……どっちが……よかった?」
「どっち?」
「俺と五条先生」
「……え?」
「キス。どっちがよかった?」
「なっ!?」
何を聞くのかと思ったら、そこ!?
頭の中に、二つの記憶が一気に押し寄せた。
突然重なった、伏黒くんの唇。
避ける間もなく距離を詰められた、先生の唇。
どちらも、とっくに終わったことなのに。
思い出した途端、その時の二人の距離まで戻ってきたみたいだった。
「な、何聞いてるの!?」
「お前が何でも聞いていいって言ったんだろ」
「言ったけど! そんなこと聞くと思わないじゃん!」
「……で?」
「で、じゃないよ!」
「俺も答えたんだから、お前も言えよ」
「そんなこと言われても……!」
わかんないよ。
どっちがよかったなんて、そんなの考えたこともない。
そもそも、どう比べればいいの!?
伏黒くんとのキスは、本当に突然だった。
あれが私のファーストキスで。
何が起きたのか理解するより先に唇が重なって、近すぎる伏黒くんとの距離にいっぱいいっぱいで。
先生のキスは、それとは全然違う。
こっちが戸惑っている間にも、全部わかっているみたいに距離を詰めてきて。
拒むとか、考えるとか。
そんな余裕さえなくなるようなキスだった。
しかも、あの時は。
キスされながら、あんなことやこんなことまでされて――。
「~~~~っ!」
だめ。
そこまで思い出したら、ますます答えられない!
というか、なんで私は廊下でこんなこと真剣に考えてるの!?