第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
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夕飯を食べて高専に戻った頃には、すっかり夜になっていた。
寮まで一緒に戻って、そのまま伏黒くんの部屋の前で待つ。
少しして、部屋の中から伏黒くんが一冊の本を持って出てきた。
「これ、さっきの」
さっき古本屋で読んでいたものと同じ表紙。
でも、これは伏黒くんが読んだ本なんだ。
そう思うと、お店で手に取った時とは少し違って見えた。
「読んだらすぐ返すね」
「いつでもいい。もう読み終わってるし」
「うん。ありがとう」
本を受け取って表紙に目を落とすが、なんとなく次の言葉が出てこない。
ここで別れると思ったら、急に何を話せばいいのかわからなくなった。
「……」
「……」
本も借りたし。
あとは、おやすみって言って自分の部屋に戻るだけ。
なのに、どうしてもその一言が出てこない。
伏黒くんも扉の前に立ったまま、部屋に戻るそぶりもない。
ちらっと伏黒くんを見ると、ちょうど向こうもこっちを見ていた。
「……」
「……」
目が合って、つい逸らしてしまう。
……なんで今さら、こんなに意識してるんだろう。
「……あ」「……あの」
ぴったり同じタイミングで口を開いた。
「……」
「……」
「伏黒くんから、どうぞ……」
「……いや、から言えよ」
「う、うん」
何を言おう。
頭の中で言葉を探して、結局、最初に出てきたのは今日のことだった。
「……楽しかった……その………デート」
「……!」
伏黒くんが一瞬固まった。
それから、誤魔化すように髪をがしがしとかく。
「なんで伏黒くんが照れてるの!? そっちが先にデートって言ったんでしょ」
「……そうだけど」
あ……伏黒くんの耳、ほんのり赤い。
あの時は、店員さんに合わせてさらっと言っただけだと思ってたのに。
その様子を見ていると、私まで恥ずかしくなってくる。
改めて「デート」なんて口にしたせいで、今日一日のことが急に違って見えてきた。
「あと……私のこと、好きになってくれてありがとう」
「……」
「私、まだ……自分の気持ちがちゃんとわかってないけど。ちゃんと答え出すから。だから……もう少しだけ、待っててほしい」
話している間、伏黒くんは口を挟まず、最後まで黙って聞いてくれた。