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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**






夕飯を食べて高専に戻った頃には、すっかり夜になっていた。

寮まで一緒に戻って、そのまま伏黒くんの部屋の前で待つ。
少しして、部屋の中から伏黒くんが一冊の本を持って出てきた。



「これ、さっきの」



さっき古本屋で読んでいたものと同じ表紙。
でも、これは伏黒くんが読んだ本なんだ。

そう思うと、お店で手に取った時とは少し違って見えた。



「読んだらすぐ返すね」

「いつでもいい。もう読み終わってるし」

「うん。ありがとう」



本を受け取って表紙に目を落とすが、なんとなく次の言葉が出てこない。
ここで別れると思ったら、急に何を話せばいいのかわからなくなった。



「……」

「……」



本も借りたし。
あとは、おやすみって言って自分の部屋に戻るだけ。
なのに、どうしてもその一言が出てこない。


伏黒くんも扉の前に立ったまま、部屋に戻るそぶりもない。
ちらっと伏黒くんを見ると、ちょうど向こうもこっちを見ていた。



「……」

「……」



目が合って、つい逸らしてしまう。

……なんで今さら、こんなに意識してるんだろう。



「……あ」「……あの」



ぴったり同じタイミングで口を開いた。



「……」

「……」

「伏黒くんから、どうぞ……」

「……いや、から言えよ」

「う、うん」



何を言おう。

頭の中で言葉を探して、結局、最初に出てきたのは今日のことだった。



「……楽しかった……その………デート」

「……!」



伏黒くんが一瞬固まった。
それから、誤魔化すように髪をがしがしとかく。



「なんで伏黒くんが照れてるの!? そっちが先にデートって言ったんでしょ」

「……そうだけど」



あ……伏黒くんの耳、ほんのり赤い。
あの時は、店員さんに合わせてさらっと言っただけだと思ってたのに。


その様子を見ていると、私まで恥ずかしくなってくる。
改めて「デート」なんて口にしたせいで、今日一日のことが急に違って見えてきた。



「あと……私のこと、好きになってくれてありがとう」

「……」

「私、まだ……自分の気持ちがちゃんとわかってないけど。ちゃんと答え出すから。だから……もう少しだけ、待っててほしい」



話している間、伏黒くんは口を挟まず、最後まで黙って聞いてくれた。
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