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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**


「くだらないことで嬉しそうに笑うところとか。前に、たんぽぽの綿毛ついてただけで『お揃いだね』って喜んでた時とか。緊張すると、すぐに髪いじるところも」



そんな細かいところまで。
私自身も気づいてなかったようなことまで、伏黒くんは見てたの!?



「困ってたら放っとけないし。泣いてたら気になるし。笑ってたら……なんか、安心する。それに……」



伏黒くんの声が、少しだけ小さくなった。



「が五条先生を見てると、面白くない」

「……!」
 
「だから、なんで好きなのかって聞かれても。だったから、としか言えねぇ」



そんな真っ直ぐに言われたら、なんて返せばいいのかわからない。
伏黒くんの言う通り、気づけば前髪を指先でいじっていた。



「ありがとう。私、美人ってわけでもないし。スタイルがいいわけでもないし。む、胸だって大きいわけじゃないし……」

「……そういうとこじゃねぇよ。見た目で好きになったわけじゃないって言ってんだろ。まあ、胸は別に大きさじゃねぇし」

「え?」

「柔らかかったし……」



そう言って、伏黒くんが自分の右手のひらを見た。
あの旅館であったことを思い出して、胸を腕で隠す。



「伏黒くん……!」

「お前が胸の話するからだろ」

「だからって言わなくていいの! 伏黒くんのばかっ!」




「……こほん」



すぐ近くの席から、咳払いが聞こえた。
二人同時にそっちを見ると、隣の席の人とばっちり目が合う。



「「……すみません」」



どうやら、思っていたより声が大きかったらしい。
気まずくて、私は残っていたミルクティーを一気に飲み干した。



「……帰ろっか」

「……そうだな」



お店を出ると、さっきまで降っていた雨はすっかり止んでいた。
濡れた歩道が、街の明かりをぼんやり映している。


伏黒くんが、当たり前みたいに私の隣を歩く。


今日だけで、知らなかった伏黒くんをいくつも知った。

好きな本。
休日の過ごし方。
私のことを、どんなふうに見ていたのか。

高専に戻ったら、さっきの本も貸してくれるらしい。


なんだろう。
さっきから、伏黒くんのことを考えると胸のあたりがふわふわする。

この感じ、先生といる時と少しだけ似ている気がした。
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