第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
顔を上げて、窓の外を見る。
まだ細い雨が降り続いていて、さっきよりは弱くなっているけれど、止む気配はない。
何となく向かいを見ると、伏黒くんもまだ本を読んでいた。
伏せられた目元を見て、ふと思う。
まつ毛、長いな。
羨ましい。
さっき雨の中を走ったのに、髪の毛は相変わらずツンツンしてる。
なんで崩れないんだろう。
今まで、ちゃんと意識したことなかったけど。
伏黒くんって、すごく顔整ってるよね。
モテそう。
なのに、そんな人が私のことを好きだって言った。
なんでだろう。
伏黒くんは、私のどこが好きなんだろう。
考えれば考えるほど気になって、じっと伏黒くんの顔を見てしまう。
「……なんだよ」
伏黒くんが、本を閉じて顔を上げた。
「さっきから、人の顔じろじろ見て」
「ご、ごめん……ちょっとだけ」
「本、つまんなかったか?」
「ううん。本はすごい面白かった……」
手元のミルクティーのストローをくるくる回しながら、さっきから頭に浮かんでいたことを考える。
今なら、聞いてもいいのかな。
ずっと気になってたこと。
「……伏黒くん」
「何だ?」
「なんで……私なの?」
「……?」
「その……」
ストローを回す動きが、無意識に速くなる。
「私の、どこが好きなのかなって……」
伏黒くんは少し眉を寄せた。
そんなこと急に聞かれても困る、とでも言いたそうな顔。
「どこって……わかんねぇ」
「え」
「いや、違う。なんていうか……」
伏黒くんは視線を落として、閉じた本の表紙を指でなぞる。
「いつからとか、何がきっかけだったとか。そういうの、はっきり覚えてない。気づいたら、のことばっか見てた」
「そうなの……?」
「任務ですぐ無茶するところとか。変なところで頑固。それに、天然で、どっか抜けてて危なっかしい」
「ちょっと待って。褒めてる?」
「最後まで聞けよ」
深い緑色の瞳を向けられて、私は素直に口を閉じた。