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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**


***



「まだ、帰したくない」



帰したくない。
それって、どういう意味で。


繋がれた手がじわじわと熱くなっていく。
指まで絡められていて、簡単には離れられない。

……ううん。
振り払おうとすれば、伏黒くんは手を離してくれるだろう。
それをしないのは。
できないのは――。



「……わ、私……」



何て答えればいい?

伏黒くんとまだ一緒にいたい?
そう聞かれたら。

たぶん――。



ぽつ。


また頬に冷たいものが当たった。



「……あ」



一滴だった雨は、あっという間に数を増やしていく。



「わ、降ってきた……!」

「走るぞ。こっち」



伏黒くんが繋いだ手を引いて、走り出した。

どこ行くの?
まさか。

また、あの旅館の時みたいな――。



「~~~~っ!」



頭が勝手にあの夜のことを思い出していく。


いやいやいや!
伏黒くんは何も言ってないし。

でもでも。
このまま、どこか二人きりになれる場所とか連れていかれたら――。

私、どうしたらいいの!?



「伏黒くん、まっ――」



そう言いかけたところで、伏黒くんが急に立ち止まった。



「ここ」



そう言って伏黒くんが指差したのは、大通りから少し外れた場所にある小さな店。
古びた木の看板。
大きな窓の向こうには、本棚がいくつも並んでいる。

よく見ると、その間にテーブルやソファが置かれていた。





「…………本屋さん?」

「古本屋。奥がカフェになってる」

「…………」



伏黒くんは、ただ雨宿りする場所に連れてきてくれただけなのに。
また旅館の時みたいなことになるんじゃないかって、一人で想像して……。

恥ずかしい。
もう、本当に何考えてるの、私。



「……ご、ごめん」

「は? 何が」



伏黒くんが、意味がわからないと言いたげに眉を寄せた。



「ううん、なんでもない!」

「……?」

「こ、こんなところあったんだね。伏黒くん、よく来るの?」

「たまに。休みの時とか」



知らなかった。

伏黒くんが、こういう場所に来ること。
休日に何をしているかとか。

そういうこと、今までちゃんと聞いたこともなかった。
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