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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**






その夜。

寮の自販機の前に立ったまま、俺はもう何分も同じ列を見ていた。

水。
お茶。
スポーツドリンク。


別に、どれでもいい。
飲み物を選んでいるふりをしているだけだ。


本当は、を待っていた。
この時間にシャワーを使うことを、なんとなく知っていたから。
偶然みたいな顔をして、声をかけるつもりだった。


最近のは、俺と二人きりになりそうになるとすぐ逃げるからな。
こうでもしないと、まともに話せそうになかった。


スポーツドリンクのボタンを押す。
取り出し口に落ちる音とほとんど同時に、廊下の奥で扉の開く音がした。


振り向くと、がシャワー室から出てくるところだった。
湯上がりで頬がほんのり赤く、まだ少し濡れた髪をタオルで押さえている。


その姿は、旅館で見た浴衣姿と重なった。


涙で濡れた目。
俺の名前を呼んだ、震える声。
俺の腕の中にいた、あの時の。

あの夜に引き戻されたみたいに、身体が熱くなる。



「ふ、伏黒くん……?」

「……おう」



は俺を見た途端、わかりやすく固まった。



「こんなところで、どうしたの?」

「飲み物買いに来ただけ」

「そ、そうなんだ……」



嘘ではない。
嘘ではないけど、全部本当でもない。


は視線を泳がせたまま、俺の横を通り過ぎようとする。
その頬が、また赤い。
風呂上がりだからか。

それとも――。



「」

「っ、な、なに?」



一歩近づくと、もなぜか一歩下がった。



「……なんで離れるんだよ」

「気のせいだよ」



そう言って、俺の横を抜けようとする。

その進路を塞ぐように、一歩動いた。

が足を止める。
それから、反対側へ。

俺も、その前へ出る。



「……」

「……」



もう一度、が方向を変える。

俺も合わせて動く。

二回、三回と繰り返したところで、がとうとう足を止めた。
その隙に一歩距離を詰めると、は反射みたいに下がって、背中を廊下の壁にぶつけた。

逃げ場がなくなったが、困ったように俺を見上げる。
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