第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
「あ、はい! 今行きます!」
助かった、と言わんばかりに勢いよく立ち上がる。
「……さっきは、助けてくれてありがとう」
「ああ……」
は玉犬をもう一度撫でてから、俺に小さく手を振った。
そのまま、少し早足で補助監督の方へ駆けていく。
その後ろ姿を、なんとなく目で追っていた。
の気持ちが、まだ俺に向いているとは思わない。
あの人がいる。
そんなことは、嫌になるくらいわかってる。
見ていれば、わかる。
だけど、こんなこと今までなかった。
の目に俺が映っている。
あの人だけを追っていた目が、ほんの少しでも俺に揺れている。
「ふーん」
突然、後ろから声がした。
振り向くと、いつの間に来たのか釘崎が立っていた。
腕を組んで、いかにも何か言いたそうな顔で俺を見ている。
「……何だよ」
「あんたたち、なんかあった?」
「……は? なんもねーよ」
「その反応は図星ね」
「…………」
黙るしかなかった。
釘崎はそんな俺を見て、呆れたように眉を上げる。
「そりゃ気づくでしょ。伏黒、前よりのことずっと目で追ってるし。あの子が他の男と喋ってる時なんて、普段の5倍マシで機嫌悪くなるし」
「そんなことは――」
「あるって。さっきだって、助けたあと、いつまで腰支えてんのよ。何あれ」
「…………」
……そんなにわかりやすいのか、俺。
まじか……。
釘崎は呆れたようにため息を吐く。
「まあ、あんたも相当だけど。の方がもっとバレバレだけどね」
「……五条先生のことか」
「あれで隠してるつもりなの、逆にすごいわよね」
釘崎はが走っていった方をちらりと見た。
それから、俺の方へ視線を戻す。