第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
𓂃 side:伏黒恵 𓂃
あの日から、の様子がおかしい。
廊下で二人きりになりそうになると、急に歩く速度が速くなる。
俺が隣に座れば、さっきまで普通に喋っていたくせに急に口数が減る。
目が合えば、びくっとして逸らされる。
これは。
避けられている、と言った方が近いのかもしれない。
『……ちゃんと、伏黒くんを見るよ』
あの夜、はそう言った。
でも、その場の空気に流されて言っただけで。
一晩経って、冷静になったら、やっぱり嫌になったのかもしれない。
俺に告白されたこと。
俺に触れられたこと。
俺にキスされたこと。
その全部を、後悔しているのかもしれない。
俺が勝手に距離を詰めすぎたせいで、嫌われたのかもしれない。
「」
「は、はいっ! ど、どのようなご用件で」
「……なんで、敬語」
名前を呼んだだけでこれだ。
こんなことになるくらいなら、ただの同級生のままの方が良かったのだろうか。
そう思うくせに、結局、のことを目で追うのをやめられなかった。
避けられているのか。
それとも、意識してくれているのか。
わからないまま、数日が過ぎた。
別の日の訓練中。
は俺が出した玉犬の動きを避けようとして、足を滑らせた。
「っ……!」
咄嗟に腕を伸ばして、腰を支える。
けれど、思っていたより勢いがついていたせいで、の身体はそのまま俺の方へ倒れ込んできた。
近い。
あの、旅館の時みたいに。
息がかかるくらいの距離で、と目が合った。