第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
――ずっと、好きな人。
そう。
先生は、ずっと特別だった。
だったのに。
『好きだ……のことが』
今度は別の声が蘇って、身体が固まった。
伏黒くん。
告白されたこと。
抱き寄せられたこと。
キスされたこと。
思い出した唇の感触に、今度は違う意味で頬が熱くなる。
「なんで伏黒くんまで出てくるの……」
先生のことを考えていたはずなのに。
いつの間にか。
伏黒くんまで、頭の中にいる。
先生に触れられた時のことを思い出せば、伏黒くんとのキスまで蘇って。
伏黒くんのことを考えれば、今度は先生の声が聞こえてくる。
もう一度、枕に顔を埋めた。
「わかんないよぉ……」
先生の「彼氏を作るな」が何を意味しているのかも。
伏黒くんに言われた「好き」に、私は何を返したいのかも。
何ひとつ、わからない。
ただ一つわかるのは。
旅館へ行く前と同じ私には、もう戻れないということだけ。
仰向けのまま、両脚を少しだけすり合わせた。
二人のことを考えると、下腹部のあたりが熱くなってむずむずする。
パジャマのズボンに、そっと手を入れる。
なんで。
もう。
なにしてるの、私。
思い出さないようにすればするほど、身体の方が勝手にあの夜を思い出していく。
目を閉じると。
そこはもう、自分の部屋じゃなかった。
薄暗い旅館の部屋。
畳の匂い。
すぐ隣から聞こえていた寝息。
背中に感じた先生の体温。
耳元に落ちてきた声。
『いいよ。もっと変になって』
先生の手は、もっと大きくて。
思っていたよりずっと、体温が高かった。
下着のふちに指をかけて、少しだけ布をずらす。
先生が触っていたように、自分でも触ってみる。
あの長い指が這っていた場所に、自分の指を重ねる。
直接肌に触れた瞬間、身体がびくっと跳ねた。
「……っ」
指の腹で、優しく撫でてみる。
円を描くように。
先生がしていたのを、思い出しながら。
こうやって。
たぶん、こんなふうに。