第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
自室のベッドの上で膝を抱えたまま、私はもう何十分も同じところを見つめていた。
今日は先輩たちも野薔薇ちゃんも任務に出ていて、寮は普段よりずっと静かだった。
聞こえるのは、時計の針が刻む音と。
時々、窓の外から届く虫の声だけ。
なのに、頭の中だけがうるさい。
『彼氏、作んないでね』
『は、僕とおんなじ特別で変なやつだって』
『その場所に、他のやつ入れないでよ』
まただ。
あれから一週間以上経っているのに、何度思い出したかわからない。
先生の声。
あの時の顔。
額が触れそうなくらい近かった距離。
「……どういう意味なの……」
彼氏を作るなって。
他の人を同じ場所に入れるなって。
それって。
それって、普通――。
「……いやいやいやいや」
ぶんぶんと首を振った。
違う。
だって先生は、一度だってそんなこと言ってない。
私のことが好きだとか。
付き合いたいだとか。
そういうことは何も。
なのに。
先生と、あんなことまでしてしまった。
思い出した瞬間、顔が一気に熱くなる。
「~~~~っ!」
そのまま枕を掴んで、顔を押しつけた。
無理。
忘れられるわけがない。
先生の腕の中で。
先生にキスされて。
先生に触れられて。
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
胸まで先生に触られた。
それに、あんなところまで。
変な声まで出して。
私、初めて――。
「……っ、もう……」
枕に顔を埋めたまま、足をばたばたさせる。
でも、嫌だったかと聞かれたら。
たぶん、違う。
むしろ。
ずっと好きだった人に触れられて、嬉しくなかったわけがない。