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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


𓂃 side:五条悟 𓂃



僕の腕の中で、の身体からふっと力が抜けた。



「……?」



呼んでも返事はない。
の寝息が、規則正しく僕の胸元をくすぐる。

今度は、ただ眠っただけ。
というか、また失神したな。


透けかけていた身体も、もうちゃんと形を取り戻している。
頬には血色が戻って、尻尾も安心したみたいに力が抜けていた。


乱れた前髪を指でそっと梳いてやる。
それから、閉じられた瞼を見つめたまま、額へ唇を押し当てた。




「……おかえり」




ずっと、言いたかった。


君は何も覚えてないだろうけど。
僕はずっと、待ってたよ。


最初に君が僕の前に現れた夜のことだって、忘れるわけがない。

僕は、その顔を見た瞬間に息が止まった。


ありえないと思った。
そんなわけないと。

だって君は、僕の知っている姿のまま。
何も知らない顔をして、そこに立っていたから。

自分がどこから来たのかも。
誰だったのかも、わからずに。


君が「名前はない」と言った時、考えるまでもなかった。



『』



そう呼んだ瞬間、君は少しだけ目を丸くして。
それから、まるで初めて自分の居場所を見つけたみたいに笑った。

あの時の顔を、僕はたぶん一生忘れない。


専属契約なんて、都合のいい言い訳だった。

協力者。
監視対象。
情報源。

いくらでも理由はつけられた。


本当は。
もう二度と、どこにも行かせたくなかっただけなのに。


気づけば、また君のいる生活が始まっていた。


甘いものを一緒に食べて。
僕が帰ると、玄関までぱたぱた走ってきて。

毎日のように、あの手この手で僕を誘惑してきた。

大半は「それ、どこで習ったの?」って感じだったけど。
たまに、本気で困るやつもあった。
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