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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


僕は僕で任務が終われば、前よりずっと早く帰るようになった。


別に急ぐ必要なんてないのに。
玄関を開けた時、君が嬉しそうに走ってくるのを見たくて。


スマホを見る回数も増えた。
他愛もないメッセージ一つで、つい口元が緩んだ。

爪だって、前よりちゃんと整えるようになった。
君に触れる時、傷つけたくなかったから。


揶揄うと、頬を膨らませて拗ねて。
褒めると、尻尾を揺らしながら照れて。


そして僕は。
そんな君を見るたびに、何度も思った。


ああ。
本当に帰ってきたんだなって。


勿忘草を見た時、君は何も知らない顔で僕に聞いた。



『五条さんは、何を思い出しに来てるんですか?』



『……大事な子』って答えたら、少し寂しそうな顔をした。
たぶん、自分じゃない誰かのことだと思ったんだろうね。

ほんと、馬鹿だよね。


僕が忘れられなかった子も。

あの花を見るたびに思い出していた子も。

ずっと、ずっと大事だった子も。



全部、君なのに。




高専の廊下を走っていた君。

秤や憂太たちと笑っていた君。

僕を先生って呼んで、手を振っていた君。

呪いを祓うたび、平気なふりをして傷ついていた君。

勿忘草の花言葉を教えてくれた君。

二人きりになると、そっと僕の手を握ってきた君。

僕が好きだと言うたび、真っ赤になりながら「私も」って返してくれた君。




忘れたことなんて、一度もなかった。

忘れられるわけがなかった。



だって僕は。









一年前。





君が死ぬところを、見たんだから。



















𓂃 勿忘草の悪魔 𓂃

── to be continued.
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