第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
「聞いてないなら、いいんです」
「ああ……あれ?」
五条さんが、何か思い出したように声を上げる。
「『好き、ごじょさんっ、すきぃっ』って叫んでたやつ?」
「めちゃくちゃ聞いてるじゃないですかぁぁぁぁぁっ!!」
「聞こえるよ。あんな何度も言われたら」
「忘れてください!! 今すぐ!!」
「やだ」
「なんで!?」
恥ずかしい。
恥ずかしすぎて、今度はソファじゃなくてベッドになりたい。
一人でしてるところを見られたのも恥ずかしかったけど、今回はそれ以上だ。
夢だと思って。
あんな風にすがって、好きだなんて言って。
神様。
さっきありがとうって言ったの、撤回してもいいですか。
「ていうかさ」
「……なんですか」
「からの告白、なんで僕が忘れなきゃいけないの?」
「それは……」
だって。
好きでもない人から告白されたって、困るだけでしょう。
五条さんには、ずっと忘れられない大事な人がいる。
私が入り込める場所なんて、きっと最初からない。
「……迷惑、じゃないですか」
やっとのことで、それだけ絞り出した次の瞬間。
頭まで被っていたシーツを引っ張られる。
「わっ……!」
「いつまで隠れてんの」
「だ、だって……」
「続きするよ」
「…………つ、続き?」
五条さんは答えず、ベッドの端で丸まっていた私の腕を掴み、強引に引き寄せる。
バランスを崩した私の身体は、そのまま五条さんの広い胸の中へすっぽりと収まってしまった。
「淫魔は契約者の欲求を満たして、精気をもらうんだよね?」
「……はい」
「じゃあ、満たしてよ」
「……え?」
五条さんの青い瞳が、真っ直ぐ私を見つめる。
ふざけているようには、見えなかった。
「」
名前を呼ばれて、心臓が大きく跳ねる。
「今度は僕に、をちょうだい」