第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
「そりゃ、起きないわけだ」
額にかかった髪を指で払う。
淫魔にとって精気は、身体そのものを維持するためのエネルギーだ。
人間の負のエネルギーを取り込んでも、それが原因で呪霊になることはない。
むしろ、それを自分たちの身体を保つ力に変えて生きている。
それくらいは、最初から知っていた。
でも、と暮らして初めてわかったこともある。
この子は、精気が減ってくると少しだけ甘えん坊になる。
僕がソファに座っていれば、いつの間にか隣にくっついてるし。
気づけば肩に頭を預けてる。
「眠いなら寝れば?」って言っても、「眠くないです」なんて言いながら、こくこく船を漕いでる。
おまけに、よりずっと正直な尻尾まで僕の手首に絡みついて離さない。
本人はたぶん、甘えてるつもりなんてないんだろうけど。
……まあ。
そういうところも、可愛いんだけどね。
最近じゃ、尻尾の動きが少し鈍くなっただけでわかる。
ああ、そろそろ精気が足りなくなってきたなって。
そうすると案の定、しばらくして僕のそばに寄ってくるんだ。
「……」
頬に手を添え、顔を覗き込む。
今はくっついてくるどころか。
名前を呼んでも、目すら開かない。
「緊急事態だからね」
誰に言い訳してるんだか。
まあ、起きてたところで今さらキスくらいで怒るような関係でもないけど。
親指で頬をひと撫でしてから、優しく唇を重ねた。
いつもなら、肩が小さく跳ねたり。
尻尾が僕の手首に絡みついたり。
キスの途中で薄く目を開ければ、が一生懸命に僕のキスを受け入れている。
淫魔なのに、こういうことに慣れていないところがかわいくて、つい揶揄ってしまう。