第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
𓂃 side:五条悟 𓂃
軽い。
腕の中のは、嫌になるくらい軽かった。
いつもなら、抱き上げれば尻尾を僕の腕に絡ませてくる。
「急に何するんですか」って文句を言いながら、嬉しいのは全然隠せてない。
なのに今は。
腕から垂れた尻尾は、ぴくりとも動かない。
やめてよ。
そういうの。
僕、それ知ってるから。
マンションに着いても、は一度も目を覚まさなかった。
寝室へ向かい、ベッドに腕の中の身体をゆっくりと下ろす。
頭を枕へ乗せて。
背中に折り畳まれていた羽を潰さないよう、身体の向きを少しだけ整えた。
白いシーツの上に横たわるを見下ろす。
顔色が悪い。
いつもは僕が触れるだけでうるさいくらい動く尻尾も。
感情に合わせてぴくぴくする羽も。
それどころか、自身まで。
身体の輪郭がうっすら透けて、今にも消えてしまいそうだった。
術師にやられたか。
それとも同族に巻き込まれたか。
だから、家から出るなって言ったのに。
「ほんっと、何してんの」
が僕との約束を破ってまで外に出る理由なんて、そう多くない。
自分のために危ない橋を渡るタイプじゃない。
「……どうせ、誰か助けに行ったんでしょ」
そういうところ。
変わんないよね。
胸元の服には、穴が開いていた。
その下に残っている、赤黒い傷。
傷の周りにそっと指先を添えても、反応がない。
それだけでわかる。
精気がほとんど残ってない。
前にベッドで倒れていた時より、ずっと酷い。