• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


『最近、拾ったばっかの子なんだけどさ』

『僕が帰るとすぐ迎えに来るし、寂しがり屋だし。放っておくとすぐ拗ねるしね』

『尻尾もすっごい素直』



――待って。
先生が言ってた「拾った子」って……。

この人?



「犬じゃなかった……」



そんな間抜けな言葉が、口から零れた。

いや。
犬どころじゃない。

誰が、マンションで待っているのが淫魔だなんて想像するだろうか。


先生は彼女の背中と膝の裏へ腕を差し入れ、壊れ物でも扱うみたいにそっと抱き上げた。

力の抜けた身体が、先生の胸元へ預けられる。
薄く透けかけた尻尾が、だらりと先生の腕から垂れていた。


先生は彼女の頭が落ちないように抱き寄せると、そのまま何事もなかったように路地の出口へ向かおうとする。



「ちょ、ちょっと待ってください!」



慌てて、その背中を呼び止めた。
先生が足を止めて、振り返る。



「なに?」

「なにって……!」



思わず声が大きくなる。



「先生、自分が何してるかわかってるんですか!?」

「わかってるよ」



先生はあっさりと答えた。
まるで、僕が何を言いたいのか最初から全部わかっているみたいに。



「憂太、この子のこと、上には報告しないでほしいんだよね」

「え……? 先生、その人は……」



そこまで口にしたところで、先生がふっと笑った。



「そ」



腕の中の女性を抱え直す。



「僕の大事な子」



あまりにもさらりと言われて、すぐには意味を理解できなかった。



「じゃ、憂太は引き続き任務よろしく」

「ちょ、先生! 待ってください!」

「お疲れー」

「先生っ!」



僕の声なんて聞こえていないみたいに、先生はそのまま路地を出ていく。



「…………」



残された僕は、ただその背中を見送ることしかできなかった。


先生、一体何を考えてるんだ?


あの顔を。
僕が見間違えるはずがない。

だからこそ、わからない。

どうして先生は、あんなにも当たり前のように彼女を抱いていられるんだ。


だって。

あの人は――――。
/ 335ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp