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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


一人の女の人が、地面に倒れていた。
その身体を押さえつけるように、もう一人の女が馬乗りになっている。


頭には角。
背中には黒い羽。
女の長い尻尾が、組み伏せられた女性の胸元へ突き刺さっていた。

資料にあった特徴と、同じだ。



「……淫魔」



地面を蹴り、一気に淫魔との距離を詰めた。
こちらに気づいて振り返るより早く、刀を横薙ぎに振るう。


ヒュッと鋭い音が響いて、淫魔の首が宙を舞う。
首を失った身体はぐらりと傾き、そのまま崩れて消えていった。



「……あれ?」



さっき感じた五条先生の気配。
てっきり先生がいるのかと思ったけれど、姿はない。



「今、一瞬だけ……五条先生の気配がしたような気がしたんだけど」



気のせいだったのかな。
それより、今は――。


僕は刀を下ろし、地面に倒れている女の人へ駆け寄った。



「大丈夫ですか?」



返事はない。
呼吸も浅く、ほとんど意識がないように見える。



「しっかり――」



助け起こそうと手を伸ばした瞬間、初めて彼女の顔がはっきりと見えた。



「…………え」



一瞬。
自分が何を見ているのかわからなかった。
そんなはずがない。



「……なんで……」



もう一度、その顔を見る。
見間違いじゃない。


身体に視線を落とすと、ありえないものが目に入った。

頭から覗く、小さな角。
地面には、今にも消えそうな細い尻尾。

さっき祓った淫魔と同じ特徴。


頭が追いつかない。
何がどうなってるんだ。


気づいた時には、刀を握り直していた。
切っ先を、彼女の喉元へ向ける。


彼女は抵抗しなかった。

いや。
もう、抵抗する力すら残っていないんだろう。

今にも閉じそうな瞳が、ぼんやりと僕を見ている。



「あなた……」



目の前にいる存在が何なのか。
確かめなければならない。
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