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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


「あの、五条先生は?」

「あ?」

「こういう大きな任務なら、先生も動いてるのかなって」

「ああ。五条なら別で動いてるらしい」

「別で……」

「お前は自分の持ち場だけ気にしてろ。五条の心配なんか世界で一番必要ねぇから」

「あはは、それもそうですね」



資料を日下部先生に返し、僕は待っている補助監督のもとへ向かった。


まさか、この任務で。
あんな光景を目にすることになるなんて。

この時の僕は、まだ知る由もなかった。









現場に着いた時には、すでに帳が下りていた。
見上げれば、住宅街一帯が薄暗い膜に覆われている。

住民の退去はすでに完了しているらしく、辺りに人の姿はない。


刀の柄に手をかけたまま、まず片手だけを帳の中へ差し入れた。
ぬるい水面をくぐるような、わずかな抵抗が手首を撫でる。

そのまま身体ごと帳を抜け、僕は辺りの気配を探りながら人気のない道を進んだ。



「……ん?」



足が止まる。

今、一瞬だけ。
遠くから、よく知っている呪力を感じた気がした。



「…………」



もう一度、意識を集中させる。
けれど、気配はすぐに消えてしまった。


気のせい……?

いや。
あれは――。



「五条先生……?」



別で動いてるって言ってたけど、先生もこっちに来てるのだろうか。


気配を感じた方へ歩き出すと、前方の路地から、小さな男の子が飛び出してきた。

リュックを胸に抱えたまま、必死にこちらへ走ってくる。
顔は涙でぐしゃぐしゃだった。



「どうしたの?」

「お、お姉ちゃんが……!」

「お姉ちゃん?」

「あっち……! 怖い女の人がいて……お姉ちゃんが僕を助けてくれたの!」



男の子が震える指で、走ってきた路地の奥を指さす。



「君はこのまままっすぐ走って。黒い壁を通り抜ければ、スーツを着た人が助けてくれるから」

「でも、早く助けないと……」

「大丈夫。僕がその人を助けに行くよ」

「……っ、うん!」



男の子が帳の外へ向かって走り出す。

僕はそれを確認すると、すぐに路地へ駆け込んだ。
角を曲がった、その先――。
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