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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


「ど、どんな方……なんですか?」

「そんなに気になるなら、教えてあげてもいいけど?」

「は、はい!」



先生は面白そうに僕を見ると、口元を緩めた。



「最近、拾ったばっかの子なんだけどさ」

「……ひ、拾った?」

「僕が帰るとすぐ迎えに来るし、寂しがり屋だし。放っておくとすぐ拗ねるしね」

「…………」



これは。
なんというか。



「僕の気を引こうとして、あの手この手で迫ってくるし」

「……迫ってくる?」

「おやつあげるとすごい喜ぶし」

「…………!」

「尻尾もすっごい素直」

「…………え?」



尻尾?
……やっぱり犬なの?



「……先生」

「なに?」

「それ……犬の話ですか?」

「さあ?」

「さあって……」

「どっちだと思う?」



五条先生は悪戯が成功した子どもみたいに笑った。


わからない。
余計わからなくなった。

犬なのか、恋人なのか、それとも両方(?)なのか。


そうこうしているうちに、車は先生のマンションの前へ到着した。



「じゃ、伊地知、憂太。お疲れー」

「あ、はい。お疲れ様でした」

「お、お疲れ様です……」



五条先生は軽く手を振ると、さっさと車を降りていく。
軽い足取りで、そのままマンションのエントランスへ消えていった。



「…………」

「…………」



僕は閉まったドアをしばらく見つめたあと、運転席の伊地知さんへ視線を向ける。



「……伊地知さん」

「はい?」

「伊地知さんは、どっちだと思いますか?」

「……何がですか」

「犬か、恋人か」

「…………」



伊地知さんの眉間に、深い皺が寄った。



「乙骨くん」

「はい」

「私は、五条さんの私生活について考えないようにしています」

「えっ」

「その方が、精神衛生上いいので」

「…………」

「乙骨くんにもおすすめします」



伊地知さんはそう言って、静かに車を発進させた。


結局、答えはわからないまま。

だけど。
五条先生があんなふうに嬉しそうに帰っていく理由があることが、なんだか少しだけ嬉しかった。
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