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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**


隣で機嫌良さそうに鼻歌を歌い始めた先生を見ながら、僕は確信した。


……間違いない。
これは、絶対にマンションに誰かいる。


でも、だからって、恋人とは限らないよな。
ペットって可能性もあるのかな。

先生、犬が好きだって聞いたことあるし。


スマホを見てニヤニヤしているのも、可愛い飼い犬の写真を見てデレデレしている顔だと言われれば、そう見えなくもない。

……だったら返事を返すのはおかしいか。
じゃあ、爪を綺麗にしてたのは?


そんなことを考えながら、つい隣の先生をじっと見てしまう。



「何? 憂太」

「えっ」

「さっきから僕のこと見てるけど。顔になんかついてる?」

「い、いや! 何もついてないです!」



僕は、慌てて視線を逸らす。

先生は不思議そうに首を傾げていたが、またスマホへ視線を戻した。


だめだ、気になる。
最近の五条先生の変化の理由。
マンションで待っているのは、女の人なのか、それとも犬なのか。


もう一度、横目で隣の先生を見た。


聞くなら。
今しかないんじゃないか。

実際に目の前でこんな先生を見せられたら、どうしても気になる。



「あ、あの……先生」

「んー?」



スマホから目を離さないまま、気だるげな返事が返ってくる。
僕は膝の上でぎゅっと拳を握り、意を決して口を開いた。



「こ、恋人ができたんですか?」



勇気を振り絞って尋ねた瞬間、車内にぴたりと沈黙が落ちた。

運転席の伊地知さんが、ビクッと肩を大きく揺らし、バックミラー越しに、ぎょっとした顔で僕を見るのがわかる。

『乙骨くん、なんて恐ろしいことを聞くんですか!?』という伊地知さんの心の声が聞こえた気がした。



「あ、いや……あの、最近先生が急いで帰ることが多いって、みんなで話してて……っ」



や、やっぱり直球すぎたかな。
先生とはいえ、さすがにプライベートすぎる話題だっただろうか。



「……恋人、ねぇ」



先生がその単語を口の中で転がしながら、窓の外へ視線を向けた。



「まぁ、そんなとこかな」

「「……えっ」」



僕と伊地知さんは、同時に息を呑んだ。
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