第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
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数日後。
僕は、都内を走る黒いセダンの後部座席で小さく息を吐いた。
隣には、長い脚を持て余すように座っている五条先生。
運転席には、いつも通り少し疲れた顔の伊地知さんがいる。
今日は偶然、五条先生と同じ任務に入ることになったのだ。
任務自体はあっという間に終わったけれど、なんだか別の意味で緊張して疲れてしまった。
「憂太」
「は、はい」
不意に名前を呼ばれ、僕は背筋を伸ばした。
五条先生は僕の方を向くと、びしっと僕の鼻先へ人差し指を突きつけた。
「呪力雑すぎ。力任せにやりゃいいってもんじゃないでしょ」
「う……」
「それ、日下部さんなんか言わないの?」
「すみません……」
ぐうの音も出ない指摘に、僕は肩を落とした。
日下部先生には、それこそ耳が痛くなるほど言われている。
五条先生はさらに何か説教を続けるかと思ったけれど、ピコンッと先生のポケットから短い通知音が鳴った。
先生は僕への説教をあっさりと中断し、スマホを取り出す。
画面を見た途端、先生の口角がゆるりと上がった。
(……うわ)
本当だ。
真希さんの言っていた通り、めちゃくちゃニヤニヤしている。
というか、先生こんな顔するんだ。
初めて見た。
先生は僕の視線にも気づかず、片手で何かを打ち込んでいる。
返事を送り終わったらしく、運転席へ身を乗り出した。
「伊地知ー、僕マンションで下ろして」
その声は、さっき僕を注意した時とは比べ物にならないほど弾んでいる。
「えっ、高専に戻られないんですか?」
伊地知さんがバックミラー越しに戸惑ったような声を上げた。
「うん。この後の報告書は、どうしても伊地知が書きたいって言うから譲るとして。僕は直帰で」
「……はい!? 私、そんなこと一言も言ってませんが!?」
「聞こえなーい」
伊地知さんが「そんな理不尽な……」と絶望したように顔を引き攣らせていたけれど、五条先生は全く気にしていない様子で再びスマホに視線を落としていた。