第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
五条先生は間違いなくモテるし、女性に困っているようにも見えない。
なんとなく、適当に遊んでいそうなイメージはある。
でも、特定の誰かを彼女にして、真面目に付き合っている姿はどうしても想像できなかった。
「悟だって男だぞ。彼女くらい作るだろ」
「そういう話じゃねぇよ」
真希さんが呆れたようにパンダくんを見る。
「悟が誰か一人に合わせて、毎日せっせと家に帰るかって話だ」
「あー……」
「スマホ見てニヤニヤして、爪まで整えて?」
「…………」
「そこまで言われると、逆に怖くなってきたな」
パンダくんが神妙な顔で頷く。
僕も、なんとなく五条先生の姿を思い浮かべた。
いつも自由で、好き勝手に動いている先生が、誰か一人のために生活まで変える。
僕の知る五条先生からすれば、それはかなり珍しいことに思えた。
そこまで誰かのために変わるってことは――。
「……相当、好きなんじゃない?」
考えていたことが、そのまま口から零れた。
「…………」
「…………」
「…………」
真希さんが鼻で笑い、ひらひらと手を振った。
「いやー、悟に限ってないない。絶対ない」
「そうだな。憂太の呪力感知、超ザルじゃん」
「おかか」
「えっ、それ今関係ある!?」
さっきまであれだけ盛り上がっていたのに、三人とも急に否定し始めた。
……そんなに、五条先生が誰かを本気で好きになるのって想像できないのかな。
「おーーい。お前ら、いつまで休んでる」
振り返ると、少し離れたところで、木刀を持った日下部先生が面倒くさそうに立っている。
「ま、考えすぎだろ。戻るぞ」
真希さんが軽く首を鳴らしながら立ち上がった。
パンダくんと狗巻くんも、それに続いてグラウンドの方へ歩き出す。
「ほら憂太、置いてくぞー」
「しゃけ」
「あ、うん。今行くよ」
僕もベンチから立ち上がり、手元のスポーツドリンクを見つめた。
みんなは気のせいだと言って笑っていたけれど。
僕の気にしすぎ……なのかな。