第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
「何かわかったの、パンダくん?」
「うんうん。あれしかないな」
「パンダ、もったいぶらずに早く言え」
真希さんが苛立ったように眉を寄せる。
するとパンダくんは、なぜか周囲をちらりと見回したあと、僕たちに向かって手招きをした。
「ったく」
「いいから、いいから」
僕たちはパンダくんの周りへ顔を寄せたところで、パンダくんは声を潜めた。
「……女だな」
「…………」
「…………」
「…………」
「せ、先生に恋人が!?」
つい大きな声を出してしまった。
「声でかいぞ、憂太」
「ご、ごめん……!」
慌てて口元を押さえる。
パンダくんはそんな僕を見て、得意げに一本ずつ指を立てた。
「考えてみろ。毎日のように高専じゃなくてマンションに帰る。スマホ見てニヤニヤする。爪まで綺麗に整え始めた」
「…………」
「これはもう、女以外考えられないじゃーん。いやぁ、春だな。今、夏だけど」
「しゃけしゃけ」
狗巻くんも、なぜか嬉しそうに何度も頷いている。
「家に帰るのと、スマホ見てニヤニヤしてんのは、まあ女って言われりゃわからなくもないけど。爪は関係なくねぇか? なんで爪整えてたら女なんだよ」
真希さんが、ふと口を挟んだ。
「あ、それは僕も思った」
僕が頷くと、パンダくんは「わかってないなぁ」とでも言いたげに首を振った。
「そんなの決まってんじゃーん」
「何がだよ」
パンダくんはにやりと笑う。
「あれを、アレするためよ」
「…………は?」
「…………」
「…………こんぶ」
あれを。
アレ。
も、もしかして……。
「憂太、顔真っ赤だぞ」
「ぱ、パンダくん。言わないで……!」
真希さんはまだよくわかっていないのか、怪訝そうに僕とパンダくんを見比べている。
「でもよ、あいつ……特定の彼女とか作るタイプかぁ?」
「…………」
「…………」
言われてみれば、真希さんの言う通りかもしれない。