第6章 【五条悟】勿忘草の悪魔 Ⅲ**
𓂃 side:乙骨憂太 𓂃
「……最近さ。五条先生、少し様子がおかしい気がするんだよね」
午後の訓練の合間。
自動販売機で買ったスポーツドリンクを握りながら、僕はふと、ずっと気になっていたことを口にした。
「は? あの馬鹿目隠しの頭がおかしいのは今に始まったことじゃねーだろ」
真希さんがタオルで汗を拭いながら、じろりと僕を見る。
「しゃけしゃけ」
狗巻くんも買ったばかりの缶ジュースを片手に頷いている。
「いや、頭の話じゃなくてね。行動がというか……」
僕がそう言うと、パンダくんが不思議そうに首を傾げた。
「行動?」
「うん。伊地知さんの話によると、最近、高専じゃなくて都内のマンションに帰っているらしいし」
「それのどこがおかしいんだ? あの馬鹿だって家ぐらい帰るだろ」
「そ、そうなんだけど。あとはこの前、デパ地下でケーキとかマカロンとか、ものすごい量のスイーツを買い込んで急いで帰ったって……」
「あいつは昔から頭のイカれた甘党だろ。平常運転じゃねーか」
真希さんが冷たく言い放つ。
(どうしたら、わかってもらえるんだろう……)
見事なくらい、まともに相手にしてもらえない。
確かに先生は変わってるし、読めないところもある。
それでも、僕にはどうしても引っかかるものがあった。
「……まあ、だけど」
ふと、真希さんがペットボトルの水を飲みながら口を開いた。
「最近やたらとスマホ見てニヤニヤしてることが多くなったな。元から気味悪いが、輪をかけて気持ち悪りぃ」
すると、パンダくんも思い出したように手を叩いた。
「この前、悟が鼻歌まじりに爪整えてるの、俺見たぞ」
五条先生が、爪のお手入れ?
先生なら身だしなみには気を使っていそうだけど。
わざわざ爪を整えるなんて、なんだか妙だ。
「おかか」
「えっ!? 狗巻くんも見たの?」
狗巻くんがこくこくと頷く。
「……これは、あれだな」
パンダくんが腕を組み、妙に真剣な顔になる。