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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「なんだ。同族か」



淫魔はそう吐き捨てると、何事もなかったように男の子へ向き直る。
私は咄嗟にその手を遮り、男の子の前へ立った。



「……何よ」

「あなた、何してるんですか」

「見ればわかるでしょ」

「この子と、契約したんですか?」

「契約?」



淫魔はおかしそうに鼻で笑った。



「こんな時に、そんな悠長なこと言ってる場合かしら」

「……え?」

「呪術師に追われてるのよ。こっちは精気が足りなくて死にかけてるの。契約だの合意だの、言ってられないわ」

「ですが、この子はまだ子どもです」

「だから何」



淫魔の尻尾が、苛立ったように地面を打った。



「子供でも人間でしょ。精気はある」

「契約してない相手や子供から奪うのは禁止されています」



そう言いながら、私は背中の後ろにいる男の子を庇うように両手を広げた。



「人間を庇う気? どきなさいよ」

「嫌です」

「……本気で邪魔するつもり?」



同じ淫魔を相手に、こんなふうに立ちはだかることになるなんて思わなかった。

できることなら、戦いたくない。
私だって、同族を傷つけたいわけじゃない。


だけど、この子が傷つけられるのを黙って見ていることもできなかった。



「この子から精気を奪うなら……私が、止めます」



淫魔は呆気に取られたように目を瞬いた。
けれど、すぐにその表情から笑みが消えていく。



「……今年の新人は、教育がなってないのね」



次の瞬間、目の前から淫魔の姿が消えた。



「え――」



脇腹に、激しい衝撃が走る。



「っ、あ……!」



身体が横へ吹き飛ばされ、背中から壁に叩きつけられた。
何をされたのか、まるでわからなかった。
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