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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「……あれ?」



外に出た瞬間、違和感を覚えた。
走っている車も、通りを歩く人の姿も見当たらない。

それに。



「……空、暗い」



まだ夜になるような時間じゃないはずなのに、頭上には重たい影が覆いかぶさっているようだった。


(雨でも降るのかな……)


そう思って見上げるけれど、風の匂いも、空気の感じも、いつもの曇り空とはどこか違う。

街全体が、薄暗い膜に覆われているみたいだった。


なんだろう。
なんだか、気持ち悪い。


尻尾も、落ち着かないように小さく震えている。


でも、立ち止まっている場合じゃない。
先輩はどこにいるんだろう。

会社……かな。

こんな状況なら、みんな一度会社に集まっているかもしれない。



「とにかく、行ってみなきゃ……!」



私は会社のある方角へ向かって、再び走り出した。
人気のない通りを駆け抜ける。








「――たすけて……!」



その声に、足が止まった。


今。
誰かの声がした。

周囲を見回すけれど、人の姿はない。



「誰かいるの……?」



返事はない。
ただ、奥の方からかすかに物音が聞こえた。
すぐそばの、建物と建物の間に伸びる細い路地からだ。


警戒しながら、その奥へ足を進めた。
建物の隙間から差し込む光もほとんどなく、進むほど足元が見えづらくなる。


やがて、室外機の影に小さな男の子が見えた。
ランドセルくらいの大きさのリュックを胸に抱え、震えながら後ずさっている。


その前に立っていたのは――。



「……淫魔」



私と同じ、角と尻尾を持つ存在だった。

けれど、その目はぎらぎらと濁っていて、男の子に向かって手を伸ばしている。
指先から、黒い靄のようなものが滲んでいた。



「待って!」



淫魔がぴたりと動きを止め、こちらを振り返る。
私を視界に捉えると、その淫魔は口元を歪めた。
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