第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
『っ……!』
「先輩!?」
『ごめん、新人ちゃん。もう切るわ』
「待ってください! 今どこにいるんですか!?」
『いいから、あんたは早く――』
「先輩!」
プツッ。
そこで、通話が途切れた。
返ってくるのは、無機質な電子音だけ。
慌ててかけ直すが、先輩は出なかった。
「どうしよう……」
スマホを握りしめたまま、私はその場から動けなかった。
呪術師側に、会社の情報が渡っている。
今も、淫魔が次々に祓われている。
そして。
私の契約者は――呪術師だ。
五条さんが私と契約した理由は、最初からわかっていたはずなのに。
私は、何を浮かれていたんだろう。
そうだ。
今朝、五条さんが出ていく前にこう言っていた。
『そうだ、。今日は、絶対に家から出ないで』
五条さんは、知ってたの?
今日、淫魔が祓われることを。
だから、私に家から出るなって。
「……どうして?」
どうして、私だけ――。
私も、あとで祓うつもりなの?
協力者としての役目が終わるまで、ここに置いているだけ?
五条さんにとって、私は何なんだろう。
契約者と淫魔。
協力者。
最初から、それだけだったはずなのに。
鼻の奥がつんとして、滲んだ涙を服の袖で乱暴に拭う。
そっと段ボールの蓋を元に戻して、立ち上がった。
五条さんには、絶対に家から出るなと言われているけど。
もし先輩に何かあったら。
それに、今回のことに私が少しでも関わっているのなら。
ここで何もせずに隠れてなんていられない。
「先輩、無事でいてください……!」
玄関を飛び出して、私はそのままマンションの外へ駆け出した。