第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
「……祓われ、てる?」
先輩が言った言葉を、そのまま繰り返す。
祓う。
それって。
「私たち……呪術師に、殺されるってことですか?」
『そういうことよ』
「な、なんで急に……っ」
『ごめん、新人ちゃん。詳しく話してる時間ないの』
電話の向こうから、慌ただしい足音が聞こえた。
いつもの余裕たっぷりな先輩の声じゃない。
「先輩……?」
『誰かが、私たちの情報を呪術師に流したみたいなの』
「……情報?」
『契約者のことも、活動場所も。かなり知られてる。じゃなきゃ、こんな一斉に狙われるなんてありえないわ』
「…………」
誰かが。
呪術師に、淫魔の情報を流した。
『あと、会社の情報、ちょっと流してもらうために』
『それ、スパイじゃないですか!?』
五条さんと初めて契約を交わした夜の会話が、鮮明に蘇る。
私は、五条さんに何を話した?
会社のこと。
淫魔の仕事のこと。
精気を集めていること。
契約の仕組み。
だけど、私が知っているのは会社の仕組みや仕事のことくらい。
他の淫魔がどこにいるのか。
誰と契約しているのかなんて、新人の私にはわからない。
五条さんも、そこまで私に何か聞いてきたわけでもない。
じゃあ、どうして。
私が話したことだけで、こんなことになるとは思えない。
それでも。
私には、自分は関係ないなんて言い切れなかった。
「……私……」
『新人ちゃん?』
言った方がいいかも。
もしかしたら。
私かもしれないって。
でも、喉に何かが張りついたみたいに声が出ない。
『とにかく、新人ちゃんも早く逃げなさい』
「え……」
『契約者のところだって安全とは限らないわ。あんた、まだ新人なんだから、呪術師に見つかったらどうにもならないでしょ』
「で、でも、先輩は……?」
『私は大丈夫』
「全然、大丈夫そうに聞こえません!」
けれど、その直後。
電話の向こうで、何かが激しくぶつかる音がした。