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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


なんだ。
私、何を想像してたんだろう。

『大事な子』の写真が壁一面に貼ってあるとか。
思い出の品がずらっと並んでいるとか。

……いや、それはそれで怖いけど。


じゃあ、どうして五条さんはあんなに怖い顔をしたんだろう。
どうして、ここだけは入ってはいけない場所みたいにしていたんだろう。


そう思いながら部屋を見回した時。
部屋の隅に、一つだけ段ボール箱が置かれている。

きれいに整えられたこの部屋で、それだけが妙に浮いて見えた。


吸い寄せられるように近づき、箱の前にしゃがみ込む。

蓋はテープで封をされているわけでもなく、ただ折り重ねられているだけだった。

開けようと思えば、簡単に開けられる。



「…………」



だめ。

ここに入っただけでも、十分すぎるほど五条さんとの約束を破っている。

これ以上は、本当にだめだ。

そう思っているのに。

もし、この中に。
五条さんの『大事な子』に関するものが入っていたら――。



「あー、だめだめ!」



ぶんぶんと首を振る。
五条さんが知ったら、今度こそ本当に嫌われるかもしれない。


けれど、尻尾は私の迷いなんてお構いなしに、器用に段ボール箱の蓋の隙間へ潜り込んだ。



「だめだってば! なんでいつも私より欲求に忠実なの!?」



慌てて尻尾を掴もうとするけれど、するりと逃げられる。
そして、とうとう蓋が少しだけ浮き上がった。



「ま、待って待って待って……っ!」



その瞬間――♪♪♪



「ひぃっ!?」



突然鳴り響いたスマホの着信音に、身体が飛び上がった。
尻尾も驚いたようにびくんと跳ね、段ボール箱から離れる。



「し、心臓止まるかと思った……」



胸を押さえながら、スマホをポケットから取り出す。
画面に表示されていた名前を見て、私は目を瞬いた。



――先輩。



先輩?
こんな時にどうしたんだろう。




「……もしもし? せんぱ――」

『新人ちゃん!? 今どこ!?』

「え……契約者さんの家ですけど」

『よかった……まだ無事なのね』

「無事って、どういう……」

『呪術師よ』




先輩の声が、珍しく震えていた。








『淫魔が、次々に祓われてるの』






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