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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


だめよ、。
五条さんは、あの部屋に入ってほしくないのだ。

契約者さんの秘密を勝手に覗くなんて、専属淫魔として最低な行為。


――ここで、私の頭の中に二人の私が現れた。



『だめ! 絶対だめ! 五条さんとの約束を破るなんて最低よ!』



白い服を着て、頭に輪っかまで浮かべた天使の私が、必死に首を振っている。


(……いや、私、淫魔なんだけど。なんで頭の中に天使いるの?)


自分の脳内ながらツッコミを入れたくなっていると、反対側にもう一人の私が現れた。
いつもの私より三割くらい悪そうな顔で、尻尾をいじりながら反論する。



『でも、ちょっと見るだけならよくない?』

『よくない!』

『だって気になるでしょ? “大事な子”だよ?五条さんがあんな顔で思い出すんだよ』

『気になるけど! だからって勝手に覗いていい理由にはならないわ!』

『写真一枚くらい見るだけなら、バレないって』

『そういう問題じゃないの!』

『本当は、羨ましくて、嫉妬で頭がおかしくなりそうなくせに。ほら、入っちゃいなよ。どうせ私たち、欲求に忠実な淫魔なんだから』

『…………』



天使の私がぐうの音も出ずに黙り込んだ。

……弱い。
私の天使、そもそも私が淫魔なせいか、めちゃくちゃ弱い。


ちょっとだけなら。
ちょっと、見るだけ。

そう自分に言い訳をして、ゆっくりと廊下へ足を踏み出す。


一歩。
また一歩。

近づくたびに、心臓の音が大きくなっていく。


やめなきゃ。
戻らなきゃ。

そう思うのに、足は止まってくれない。


あの扉の前に立ち、ドアノブを見つめる。



「……ごめんなさい、五条さん」



意味のない謝罪を呟いてから、ドアノブへ手を伸ばした。

鍵はかかっていない。
誰もいないとわかっているのに、忍び込むようにそっと部屋へ足を踏み入れた。


そこは、拍子抜けするほど普通の部屋だった。


えっちな本が並んでいるわけでも。
誰かの写真があるわけでもない。


大きなデスク。
壁際の本棚。
座り心地の良さそうな椅子。
ピッタリと閉じられたカーテン。

どちらかといえば、書斎のような部屋だった。
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