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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「今日は帰ってきますか?」

「んー、今日は遅くなるかも」

「そう、ですか」



五条さんは上着を羽織って出かける準備を終える。
すると、何かを思いついたようにこちらを振り返った。



「そうだ、。今日は、絶対に家から出ないで」

「絶対?」

「うん、ぜーーーーったい」

「え……あ、はい」



まぁ、今日は特に用事もないし。
報告書さえ提出すれば、会社に行く必要もないし。

だけど、どうしたんだろ。



「じゃ、いってくるね」



五条さんは最後までいつも通りで。
軽く手を振って、玄関の向こうへ消えていった。

私はしばらく五条さんが出ていった扉を見つめていた。



五条さんは、最後まではしてくれない。
私には、触らせてもくれない。

それはきっと、私が下手そうだからとか、処女だからとか。
そんな理由だけじゃない。



『……大事な子』



勿忘草の前で見た、あの優しい顔を思い出す。
私には向けられていない、誰かを想う顔。

五条さんの中には、今でも消えない人がいる。


そんな人がいるなら、私に触らせないのも当然だ。


じゃあ。
どうして、私と契約したんだろう。

会社のことを知りたいから。
淫魔のことを調べたいから。


でも、それだけじゃない気がしてしまうのは、私の勘違いだろうか。


(……代わりでも、いいから)


五条さんが寂しい時に抱きしめる、ぬいぐるみみたいな存在でも。
『大事な子』の代わりに、ほんの少しそばに置いてもらえるだけでも。


それでもいい。
このまま、五条さんのそばにいたい。


そう願ってしまった自分が、ひどく惨めで、ひどく浅ましかった。



ふと、廊下の奥にある扉が目に入った。
いつも閉ざされている、あの部屋。



『そこは掃除しなくていいから』



前にそう言った時の五条さんは、いつもの五条さんじゃなかった。
笑っているのに、少しも笑っていなかった。


あの時は、ただ何か見られたくないものがあるのだと思った。
仕事の資料とか。
呪術師としての道具とか。
私が触れてはいけない、危ないものとか。


でも、今は違う。


あの部屋には。

もしかしたら、五条さんの『大事な子』に関するものがあるのかもしれない。

一度そう考えてしまったら、もう扉から目を逸らせなかった。
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