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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


夢で見た花だ。

青い花。
頬を撫でる風。
誰かが私の名前を呼ぶ声。



「……この花の名前って……」

「その花……勿忘草っていうんだよ」

「わすれなぐさ……?」

「そ」



五条さんは花の前にしゃがみ込み、青い花びらに触れるか触れないかのところで指を止めた。



「私を忘れないで、って意味の花」



私を忘れないで。


胸のどこかが微かに疼く。

私は何も忘れていないはずなのに。
忘れるような過去なんて、持っていないはずなのに。

どうしてだろう。



「五条さんは……」



聞いてはいけない気がした。
それでも、言葉は勝手に零れていた。



「何を、思い出しに来るんですか」



五条さんはすぐには答えなかった。

潮風が、白い髪をさらさらと揺らす。
夕暮れの海が、静かに光っている。

やがて五条さんは、ひどく優しい顔で少しだけ笑った。



「……大事な子」



五条さんの口からこぼれたその言葉を聞いた瞬間、潮風の音が遠くなった。



五条さんに、そんな顔をさせる人。
今でも、こんなにも大切に想われている人。

その人は、どんな人だったんだろう。


そう考えたら、抱きしめていたペンギンのぬいぐるみに、知らないうちに力がこもっていた。


知りたい。
でも、知りたくない。

その人のことを知れば知るほど、今ここにいる自分が惨めになりそうだった。


だって。
五条さんにそんなふうに想われているなんて。


羨ましくて、たまらなかった。

その人じゃなくて、私を見てほしい。


ふいに水族館での男の子の言葉が蘇った。



『お兄さんとお姉さんは、好き同士ってこと?』



そっか。

あの子は、もうとっくに名前を教えてくれていたんだ。

ずっと膨らみ続けていた、この感情の名前を。















私、五条さんが好きなんだ。










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