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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**


「学生の頃にさ、沖縄の水族館に行ったことがあってね」

「沖縄、ですか」

「そ。すっごい綺麗だったから」



そう話す五条さんは、目の前の水槽を見ているはずなのに、もっとずっと遠くを見つめているような気がした。



「……今日は、なんか来てみたくなってね」



ぽつりと零れ落ちたその声は、どこか優しくて、ほんの少しだけ寂しそうで。


五条さんが何を思い出しているのか、私にはわからない。

でも、その横顔があまりにも綺麗で。
私はもう一度、五条さんから目を逸らせなくなってしまった。





「ねーえ。お兄さん、お姉さん」



不意に、足元から小さな声が聞こえた。



「……え?」



視線を落とすと、サメのぬいぐるみを抱えた男の子が、私たちを見上げていた。

五、六歳くらいだろうか。
水槽の青い光を受けて、丸い瞳がきらきらしていた。


私はその場にしゃがみ込み、男の子と目の高さを合わせる。



「どうしたの? 迷子?」

「ううん。ママ、あそこにいる」



男の子が指さした先には、少し離れたところで電話をしている女性が見えた。



「そっか。でも、あんまりママから離れると心配しちゃうよ」



けれど男の子は、私の注意なんて耳に入っていないようだった。
私と五条さんの顔を交互に見比べると、突然、無邪気に口を開く。



「お兄さんとお姉さん、デート?」

「でっ……!?」



思いがけない質問に、声が裏返った。



「ち、違っ……これは、その、特別課外活動って言って……!」

「とくべつ、かがいかつどー?」

「そう! 契約者さんのことをよく知るために――」

「デートだよ」



私の言葉を遮るように、五条さんがあっさりと言った。
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