第5章 【五条悟】勿忘草の悪魔 II**
「……似てます?」
「えー、そっくりだよ。初めて僕の前に現れた時なんて、ほぼあんな感じ」
「……なっ!」
言い返そうとしたけれど、ペンギンのあまりに不器用な姿に、なんだか本当に自分を見ているような気がしてきて反論しきれなかった。
だって、あの時は初出勤だったんだもん。
仕方ないじゃないか。
薄暗い館内は、水槽から放たれる青い光に包まれている。
私たちは、ゆらゆらと泳ぐ魚たちやペンギンを眺めながら並んで歩いていた。
「、次はあっち! 変な顔の魚がいる」
五条さんは、本当に無邪気な子どものように楽しそうに歩いていく。
私は「あ、待ってください!」と慌ててその後を追いかけた。
辿り着いたのは、この水族館のメインとも言える、壁一面に広がる巨大な水槽の前だった。
頭上まで弧を描くガラスの向こうを、大小様々な魚たちが群れをなして悠々と泳いでいる。
「うわぁ……」
綺麗。
青い世界の中に、迷い込んだみたい。
ふと、隣に立つ五条さんを見上げた。
水槽から放たれる青い光が、彼の白い髪や整った横顔を淡く照らしている。
サングラスの奥に覗く青い瞳にも、水槽の光がきらきらと反射していた。
それがあまりにも綺麗で、つい見入ってしまう。
すると、五条さんが不意にこちらへ顔を向けた。
にやりと意地悪そうに口角を上げる。
「ん? 僕に見惚れちゃった?」
「ち、違いますよっ!! す、水槽がすごく綺麗だなって思ってただけです!」
「ふーん? 僕の方見てた気がするけど」
五条さんはくすくす笑いながら、また水槽へ視線を戻した。
何も言い返せない。
私も水槽の方を向いたけれど、魚たちの姿はもうほとんど頭に入ってこない。
「そ、それより……どうして水族館なんですか? 五条さん、魚が好き……とか?」
誤魔化すように、矢継ぎ早に質問をぶつけたが、五条さんはすぐには答えなかった。
水槽の中で、大きな魚がゆっくりと目の前を横切っていく。
その影が、五条さんの顔に青く揺れた。
「んー。好きっていうか……」
眩しいものでも見るように、その青い瞳が細められる。